【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-61-
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古来、王権が国政を執する時、何らかの政策発表は城内からお触れを出した。洋の東西を問わず、まま見られたパターンである。
ここアルフェラッツはそれを継承する。無論ウェブサイトにも追記されるが、報道媒体を要するほどの国家規模では無いこと、お触れを出すというプロセス自体も一つの観光資源に使える、という判断もあるようだ。
午後3時。城のカリオンを鳴らして住民が城壁周囲に三々五々。カメラ構えたお出かけ着はそれこそ観光客か。
自動演奏が止まったところで、王女メディアは布告台から身を乗り出した。ちなみに、応じた発声レッスンは受けており、最悪、その大声を武器的にも使える。
「お集まり頂きありがとう御座います。本日は王家より国民の皆さんにお知らせがあります」
声が城壁に反響し、尾を引き広がる。
聴衆は百名程か。少しざわめくのは普段ここにいない彼女が布告台に立っているからか。
「2つあります。まず1つ、わたくしは本日、この日本人、相原学さんと婚約しました」
相原は傍らに立って聴衆に対して頭を下げ、一歩下がった。
拍手。ただパラパラとお義理な印象で、変な表現だが独裁国家の議会のそれと位相を逆にする。
「もう1つ。伴い、私は16歳の誕生日をもって日本国籍を取得し、応じて本国王権は継承しないこととします。審議中の王権廃止案の可決を持って、私どもは労働と納税の義務を負う一国民になります」
こちらにはさすがに聴衆からどよめきが上がった。
「質問をお受けします」
「それは、為政放棄では無いのですか?」
挙手があるでもなく、早速投げかけられるその言葉尻は、糾弾調。
「もちろん、委譲期間を設けます。ただ、王家に付与された為政特権、例えば拒否権や税率改定の強制権は、案の可決と同時に停止で良いと思われます。政権委譲委員会を立ち上げると聞きましたので、公開議会で話し合いになるかと思います」
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