【理絵子の夜話】新たな自分を見つける会-15-
りえぼー、助けてりえぼー、はまった。私は罠にはまった。
助けて!
「滅却の儀式をします」
信じられないようなことを書く。牧師と称した者は下半身の衣服をぺろりとはぎ取って己の性器を露出した。それはスラックスを履いてるように見えたが、両サイドにジッパーが付いており、簡単に取り外せるのだ。つまり“儀式”の常態化を示唆した。
「私はあなたに愛を捧げます」
レトリック悪用ここに極まれりと書くか。字面の美とは裏腹、そこにあるのは興奮し怒張した男性性器。
“主任務待機”状態にある成人男性のそれを唐突に見せられる女子中学生。
人体が本来有する柔軟性と真逆と書ける硬質性、意識と連動した状態を明確にした“それ”の異様さと生々しさは、想定される事態も伴い、大抵の場合、パニックを惹起する。
ただ、田島綾の場合、想定される事態への本能的なパニックは生じたが、露出されたそれを目にする“耐性”はあった。端的には父親の存在による現物の目撃であり、……男性同性愛を扱ったマンガが好きなのである。
そのマンガに描かれた状態が目の前に現出しただけ。
しかも、何ぶんマンガで描かれたそれよりは貧相な姿であった。
そして、それが男のプライドを痛く傷つける攻撃手段になることも判っていた。
以上、冷静な分析は彼女に利した。
ハミングなりに笑い飛ばしてやる。結局それかいお粗末さん。
暴れる一転クックックと笑った彼女に。
興奮状態のそれがオジギソウのような変化を見せると同時に、
彼女を押さえつけていた周囲の力が緩んだ。
「りえぼー!」
叫んだ。田島綾はその一瞬に全てを乗じて声にした。
爆竹の破裂に似た大きな音と、風が生じた。
「おん まゆら きらんでぃ そわか」
唱える声が凛として響き、光と共に入って来た。その方向には開け放たれた玄関ドアがあり、猛烈な風を背にして立っている髪の長い娘がいた。
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