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2015年1月28日 (水)

【理絵子の夜話】新たな自分を見つける会-16-

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 風はまるで生き物のように、言うなれば不可視の竜のように“教会”の中に入り込んだ。そして棚の中や床の上の諸々を吹き飛ばし、巻き上げた。その場にいた田島綾以外全員の頭上になにがしか降ってきた。
 風の竜。竜巻そのものであった。
 意志持つ風の竜は轟々と音を立ててひとしきり渦巻いた。あらゆる物が元の位置からずれ動き。壁や天井に突き刺さった。
 人々は手を頭にかざし、その場を逃れようとのろのろと動き出した。すると窓ガラスが内から外へ向かって叩き割られ、次々割られ、その甲高い破壊音の連打が人々の咽頭から悲鳴を引き出した。
 風は巻き上げたあらゆる物とガラス片をごちゃ混ぜにして窓から外へと持ち去った。
 冬の空気に吹きさらしとなったその場に数名の人があった。ある者は呻き、ある者はのたうち、いくらかの出血も見た。
 自分は保護されたのだ。田島綾の第一認識、次いで北村由佳を気にする必要がありと見渡し、その姿を発見する。北村由佳は失神状態で横たわり、その母は彼女の頭を抱え込むように横座りの状態であり、やはり失神していた。
 人の気配に田島綾が見上げると、風を起こした娘があった。黒野理絵子であった。理絵子はセーラー服翻してそこに立っていた。その長い髪をなびかせて、仁王立ちで周囲を睥睨していた。
「綾はこっちへ」
 理絵子は田島綾に目線を向けることなく、左手を持ち上げ、親指で背中越しを指差し、部屋の隅の玄関寄りに移動するよう促した。田島綾がいざってその場に移ると、ゆっくりと身体の向きを変え、一歩ずつ慎重に歩き出した。その髪の毛は舞うように動き、セーラーの裾も翻っている。しかし今、風は皆無であった。
 それはそこに力が、何らかの力場が生じていることを証しした。
 理絵子が超能力を発揮しているのであった。田島綾は驚きつつ、しかし当然という気持ちで認識していた。
 

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