【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-69-
相原はナイフ突き出して来たその腕を見、しかし特段驚くこともなく、その手首を取り、姿勢を下げ、相手の下に潜り込むようにして、くるりと向きを変え、
柔道の一本背負い。
校長は相原に向かって突進してきたのであって、相手の攻撃エネルギを用いる柔道にとって、それは充分なポテンシャルであった。
校長の身体は見事なまでに円弧を描いて宙を舞い投げ飛ばされ、
仰向けにリノリウムの廊下に落ちた。
ちなみに、背負い投げは、投げた後で手を離せば自由落下、逆に叩き付ければ相手の後頭部を強打させ、早い話殺害できる。柔軟に対応できる。柔道とはよく言ったものだ。
対し相原は、校長の身が自らの身体を乗り越え、落下モードになったところで腕を引き上げるような動作をし、下半身はさておき、頭部の打撃を回避した。
校長は仰向けになり、覗き込んだ相原と顔を合わせた。投げられた際に手のひらを離れたナイフが今更のように音を立て転がり、レムリアが回収した。
「ジーザスクライスト」(イエスキリストの意だが、なんてこった、的な意に使われる)
その見開かれ、そして震える青い瞳孔は、魔法を目の当たりにした現代人の反応そのものであった。
魔法の国で、東洋人から、魔法を喰らった。
彼の認識はそう解釈すれば合点が行くであろう。ちなみに、物理的手段に出たことは、校長自身は何らか超常の手段は持たないことを意味した。言い換えれば魔法の存在を知る者の走狗に過ぎない。
「何をした……」
校長は相原に問うた。ナイフで刺したはずなのに、刹那の後には自分が叩き付けられている。
相原は校長から手を離さない。
「これは“ジュードー”だ。オリンピックのポイント稼ぎはニセモノだよ。おっと余計なことはするなよ。貴殿を殺さなくてはならない」
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