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【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-70-

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 相原は縮むパンタグラフのように一瞬の動きでしゃがみ込み、スーツの襟首に添えた手の角度を変え、校長の首元に手首をあてがった。
 絞め技である。その状態から手首を軽く動かすだけで首が絞まって窒息する。この種の流れ技も柔道の本来形の一側面である。
 力や大きさが勝敗を意味する国家民族にとって、“柔よく剛を制す”感覚は理解を超えた文字通り魔法であろう。
 校長の顔には理解不能な存在に対する恐怖の色がある。
 勝負が付いた。
 レムリアは歩み寄り、拾ったナイフをもてあそびながら、校長を覗き込んだ。
「申し立てがあるなら時間を与える。私にも不行き届きがあったのかも知れない」
 それは王女の威厳を伴った問いかけであった。
 手にしたナイフは傍目に脅迫だが、レムリアはその刃をぐんにゃり曲げて見せ、どころか紙で出来たようにぐるぐるのロールケーキ状にしてしまい、放り出した。
 校長が驚いたか、身体動かす素振りを見せ、応じて相原が手首をぴくりと動かす。軽く締めて“一瞬で殺せる”ことを誇示する。
「……白人(この者はセイント・ホワイトと称した)がそれ以外の生物の支配下に入ることがあってはならない」
 校長は素直に認めた。
 それは植民地主義の裏返しと言えた。有色人種は人間では無い、それが大航海時代以降の植民地政策・搾取正当化の論拠になっている。
「現在ただいま合衆国の大統領はアフリカ系だが?」
「企んでるに決まってるじゃん。力の拮抗は常にある。表だって出さないだけ。見せたくない本当のためにいかにもそれっぽい嘘を前に出すんだって。ウチはその肝」
 相原の問いにレムリアは答えた。相原はフッと息を一つし、
「そこを潰そうと」
「その通り。最もこいつはただの差別主義者じゃ済まないけどね。……あなたの国へ行きたい、行くように動く流れのもう一つがそれ。キリスト教の仮面をかぶった困った人たちが多く入っているでしょ?」
 

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