【理絵子の夜話】新たな自分を見つける会-21-
大声に気が付いた者はなく、誰も反応しない。
「ここにいる誰もが同じ。人格改造というか洗脳というか。そこに入り込んで魂レベルで分かちがたく結びついてるよ。だから相手してたんだけどね。私に絡んで、どうにかなりそうと思わせ続ける分には、他の子には手を出さないでしょ。失敗したのはむしろ私。パラレルで手を出してくるとは思ってなかった。読めなかった」
理絵子は言うと、綾の前に腰を下ろし、手のひらを開いた。
金色の髪の毛一つ。
「これは?」
「お守り。持っていれば接近すらしてこないから。ていうかこいつらには見えなくなる。本物の霊物(れいぶつ・理絵子の造語)。常に近場に。出来れば身につけて」
「ああ、うん」
綾はそれを自身の財布に収めた。
未知なる感覚が綾を囲繞する。真夏に木陰へ入ったような、涼やかで爽やかな。
髪の毛が何らかの力の場を発生させ、自分に不快と思わせる諸々を排除している。綾の持つオカルト知識ではそう理解された。
本物の超能力が自分に行使されている。
超絶の認識は、興奮とは真逆、癒やされる心理を綾に与えた。コンプレックスと感じていた諸々が矮小化して行く。
守られたかったのか、自分。
そして、自分、ひとりじゃない。
自分、りえぼーと一緒にいられればそれでいい。
むしろそのために自分という存在はある。
「むしろ……」
心に浮かべた同じ言葉を理絵子から聞き、綾は驚き半分理絵子を見た。
「えっ」
「どうしたの?」
「ううん。何でも。なに?」
「むしろ謝らなくてはならないのは私の方だね。あなたを巻き込んでしまった」
理絵子の言は普通のそうしたトラブル、学校でのゴタゴタ事象と重みが違った。
困難で尋常じゃない……理絵子の“巻き込んだ”の趣旨はそういうことであろう。
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