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【理絵子の夜話】新たな自分を見つける会-23-

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「おん まゆら きらんでぃ そわか」
 理絵子が突如真言を口にした。その理由を綾が知ったのは1秒後。
 それは、人の挙動ではなかった。
 文字通りの操り人形であった。当初ニコニコし、そして自分を襲い、失神していた人々。糸釣られる動きで身を起こし、立ち上がる。まぶたを開き、しかし何処も見ていない目を向け、二人へ向かって歩いてくる。
「憑依(ポゼスト)」
「その通り。まともに対処するなら殺人になるだろうけど」
 理絵子は綾の前に立ちふさがり、迫り来る人体をぐるり一瞥した。
 結界が、バリアが、彼らの前進を阻止している。
 の、うちの一名。
 北村由佳に向かって理絵子は指を弾く。空中にある何かを指先で弾く有様に似て。
 北村由佳の身体を抑止していた力が外れ、勢いよく理絵子めがけて突進してくる。
 爪を立て、歯を剥き、醜悪に顔を歪めたその様は、吸血鬼のそれを思わせた。
 だが。
 対し理絵子は彼女を、北村由佳の身体を……抱きしめた。
 その包み込むような所作は、愛する者に対するそれであった。
 母が子に成すそれというより、将来を誓い合った恋人同士のそれであった。
「由佳……傷ついたあげくの……」
 北村由佳に友達はなかった。それは自明でもあった。生まれた時点で母親がすでにこの組織の影響下にあり、その中で正しいと信じ生きてきたのだ。それは傍目には不気味であったことも知らず。
 通り一遍の会話はするが誰も近づいてこない。自分の会話相手は“同級生”であるが“友達”ではない。その真実気付いた時のショック、深甚さたるや如何ばかりか。
 さておき、抱きしめるという理絵子の反応は他の者の動きを凍り付かせた。その同期は同一の主体が複数の人体を操っていることを示唆した。無線操縦で一人が複数の機器を操ることがあるが、類例と言えた。理絵子は抱きしめるという行為を通じ、操縦者に直接干渉し、その動きを封じてしまったのである。
 

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