【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-72-
レムリアは出された相原の手握り返し、引き寄せ、腕を巻き付けて言った。
験比べ……それは密教の超能力対決を意味する語。
歩き出しながら彼女は語る。
「私には魔法に付随して超能力がある。ご存じの通り。比して同じ能力を持って世界征服を企む者が何故いないのか。いないのでは無い。いるけど抑えることが出来ている。これまではね。そういう者達は破壊や殺戮という手段を実は使わない。太古の覇権主義の方法を使わない。心を操り、社会体制を変革するように仕向ける。勝者と敗者が固定された状態を目指す。吸い上げる一方の形態になるように改変しようとする。すると、搾取される側は諦念を抱き、ついには光に背を向け、闇を見るようになる。そのようにさせる」
レムリアの指摘が、格差社会の背景を意味することは説明するまでもあるまい。
「まぁ、日本もなりつつあるけどな……興味深いことを教えてあげよう。1900年代初頭、日本の秩序こそ真の平和の規範と信じ、これを世界へ広めようとした依り代の女性がいた。が、不運にも当時帝国政府の拡大政策の波に飲み込まれた。そして世紀を超えて振り返ったとき、日本の言う平和と、武器を掲げた国々の言う平和と意味が違うことがようやく浸透してきた。武器の国が言う平和は、君が言った勝敗の固定された状態。日本の言う平和は……循環だ」
相原の言う女性とは“出口なお”のことである。息子の王仁三郎(おにさぶろう)と共に、いわゆるカルトの始祖のように言われた時代もあったが、政治思想や拝金主義とは無関係のもっと純粋なものだったとする分析が21世紀以降は主体的だ。
「ならば私が感じているのは……それを壊そうとする勢力なのでしょう。ここは長く宗教間の対立に対し緩衝地帯に有った。応じたどちらの勢力も排除する力の場にあるから、あなたの心配は無用」
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