【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-73-
その時、相原には正直なところ若干の不安があったようだが、レムリアの言葉に首肯して見せた。
対してレムリアは立ち止まった。相原は抱いた不安を見透かされたと思ったようだが。
「船を呼んだ?」
「うんにゃ?……おっ」
相原は気付いた声を出し、着ているスーツの上着ポケットからオーディオ用のイヤホンケースを取り出し、中からイヤホンの先っぽだけのような、すなわち耳栓を思わせる機械を取り出した。
機械は小刻みにバイブレーション。
「アルゴ号だ」
アルゴ号。それは二人が出会ったきっかけ。世界レベルの最高機密。
空飛ぶ船の名。
12
来るらしい。どういうものかは飛来すれば判じよう。
相原は耳栓型の機械、すなわち通信機、兼、その船の思念コントローラを耳に挿した。
「相原です。どうしました」
「セレネさんから。降りるって。そして私に……」
相原が聞いているであろう内容を先んじて言いながら、レムリアはウェストポーチをゴソゴソし、同様に機械を耳に挿した。
二人は同時に学校前の街路を見やる。轟と音を立てて空気の流れが突如発生し、もうもうと砂煙が上がり、枯草街路樹がギシギシしなり、周囲家屋のドアやガラスが鳴動する。
“船”アルゴ号が降りたのである。但しそこに姿は見えない。
見えないように小細工(クローキング)をしている。船の側では“透過シールド”と称しているが、一般には光学迷彩と書いた方が通りが良い。街中に空から船が降りてくる、その異常性の故に身を隠した、であろう。
『私どものところへ』
ハープの弦のようなその声はアルゴ号副長の女性、コールサイン“セレネ”の声。
二人は手を取り走る。階段を降りて昇降口を抜け。
気付く、学校の中から、校舎のそこここから、そして街の中から。
吸い寄せられるように歩いてくる人々の姿。
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