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天使のアルバイト-002-

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 具体的には出題した男性の意識を拝見、である。氏は離れた場所で執務中だが、難ではない。
 接触を悟られなければ。
 出題した当人(と表現しておく、便宜上)であるからには、回答例多く持つはず。その実体験を組み合わせれば。すなわちコピーペーストすれば。
 理解されよう、彼女の試みはカンニングである。
 その時。
「エリアさん」
 その声は、無人と思っていた暗闇から突如呼びかけられたように、彼女には感ぜられた。
「うわ!」
 返事ではなく、驚きの叫び声が彼女の口をついて出る。意識が捉えていた“出題者の記憶の映像”は持ち去られるように消えた。
 肩に置かれた手。振り返ると、試験監督の女性の目。
憐れむような、悲しいような、その目。
「……あの」
 および、周囲から集まっている、自分に向いた級友達の目。
 冷たい目。軽蔑の目。
「あなたの試験はそこまでです。リテシア様の所へ」
「はい……」
 彼女はしょげてうつむいた。逃げも隠れも出来ない。そうするつもりもない。悪いことをしたのは事実。
 筆記具を机に置く。そして促されて立ち上がり、みんなの目線を受けながら、試験監督の後につき、教室から退出して行く。
 扉を閉める。
 静かな廊下と、大理石の作りがもたらす、ひんやりした空気が、彼女に冷静な内省を促す。
 頭から、すーっと、血の気が引いて行く気持ち。ああ、人間さんの言う気持ちが判る。
「こちらへ」
「はい」
 歩きながら、徐々に、“とんでもないことをした”という気分になってくる。恥ずかしさと……どこか焦りに似たような気持ちが、心臓の鼓動を高める。それは恐怖に似ている、と言って良いか。
 ペナルティを課される予感なのだと気付いた。
「あなたは、どうも、取り組む姿勢に真剣さが足りないようですね」
 だから不正行為で済まそうとしたのでしょう?……婉曲なく核心を突かれ、返す言葉がない。
 

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