【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-78-
電磁推進の金属塊は、刻まれた魔方陣の線刻を切り破ってしまったのだった。
魔方陣の線刻。それは母も娘も知らぬ事実であった。玉座の間、床板裏面に、地下から迫る魔の力を抑圧すべく、魔方陣を刻んで封をしてあったのだ。祖先はその旨を子孫に伝えず世を去った。ただ、今、全て天啓の形で女性二人にはもたらされた。
理由を父王の意識より得る。
魔に必要なのはひたすらに長き時のみであり、魔を操する者が慈悲を施して途中解放することがあってはならない。
従い、地の底へ送り込まれた魔を封じると共に、慈悲請う彼らの声すら遮るよう陣を講じた。そして、子孫代々が知ることすら無いように、誰にも告げぬまま世を去った。
もし、開かれる時あるなら、時を司る者がそのように取り計らった時。
そして、その時が来たならば、魔を司る者の威厳を持って接せよ。
レムリアの理解する限り、魔の処理方法は多く二通りである。堕天使に代表される“魔道に落ちた者”はその心救い上げ慰謝を与えて光に返す。
根源的な魔は魔界に戻して封じる。
その根源を封じた場所がこれで、今、破れた。
果たして黒い霧が電磁砲撃の穴から出現し、玉座の間を満たした。それは数千年を通じて後から繰り返し封じられ続け、合体して一つの人格をなした大きな魔であった。日本の昔話に出て来る“巨大な鬼”を思わせた。
その存在に燕尾服二人は起き上がり、こけつまろびつ逃げ出した。魔の手先であろうのに怖いのか。
対し、レムリアは怖くは無かった。
不思議な感慨であった。黒い霧はもし魔王と称しても、そう思わせるだけの大きさ、力を感じさせた。だから燕尾服は逃げたのだろう。魔すらも恐れる魔なのだ。だのに、恐怖を感じず、実際攻撃もしてこない。
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