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天使のアルバイト-004-

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 女性リテシアはため息を小さくひとつし。
「あなたは、“付与された力”を、なぜわざわざ抑圧し、様々なことを考えさせ、行動させるか、その意図が判っていません」
 反論不能。
「そこで、しばらく、あなただけの力で生活し、その理由を判ってもらおうと思います。級友の皆さんとは、しばらく会えません」
「え?」
 彼女は目を円くして女性を見た。
 意図が判らない。束縛懲役に相当する罰則はないはず。
「その通り。ですので、ここではない場所、異境に派遣し、個人研修……特別授業をしていただくということです。級友と連絡を取ることもできません。付与された力の一切を封じます。あなたは、あなた自身の力と思考、同じ場所に住む他の方々たちの協力のみで生活するのです」
「あの……」
「大丈夫、命に関わる場所ではありません。では、派遣します」
「あっ!」
 彼女が質問するより早く、女性の手が彼女の額に触れ、その瞬間、彼女は意識のヒューズが飛んだように何も判らなくなってしまった。
 
 
 日本、埼玉県。
 夜の川に掛かる短い鉄橋を電車が行く。白い車体に青いストライプを巻いた私鉄電車。鉄橋の上だけ鉄と鉄の組み合わせであり、電車にとっては一またぎと言って良く、轟音が車輪の数だけリズムを刻む。
 午後7時30分。
 学校の体操服だろう。ジャージ姿が川沿い堤防、斜面を覆った草の上を歩いてくる。小柄で、川沿い家々から漏れ来る灯火で女子生徒と認識できる。彼女は、その草に足首まで埋もれさせながら、比較的ゆっくりしたテンポで歩いている。
 と。
「ん?」
 彼女は前方、草むらの中に異変を発見し、足を止めた。
 それは一見、丸めてくしゃくしゃになった白いシーツ。
 違う。
 人である。
 彼女は気付いて駆け寄る。急いでいる割にはゆっくりした足取りで、まとわりつく草にちょっと困惑しながら。
 

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