【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-82-
以下、思念だけのやりとりを要約する。彼らはそもそも人の形をとることで、結界されたこの国・国土への侵入に成功した。応じて、人の形を取っている段階で排除する。
人の肉体はある意味、心を直接攻撃されることへのシールドである。応じて、人間性という概念が成立する。またこの結果、今行った自分の攻撃も気付かれず遂行できた。彼我の“魔の違い”に気付かなかったというのだ。
果たして黒い霧が戻って来た。まるで王室が“彼”を吸い込んでいるような挙動を示して王室内部に流れ込み、再度人の形に集合する。
「終わった」
何をしたのか、概念で寄越す。
-闇の中の闇は存在が判らない。目立たないようにした。
「ダークマターだな。天使のヒエラルキならぬ、宇宙構造の転写ぜよ」
レムリアの思念を受けて相原が言った。宇宙、例えば銀河の質量は、見える星の数だけでは、その星々を引き留めておく重力に不足する。観測されない質量因子があるだろうという仮説が立つ。その因子を見えない、イコール黒いとして、ダークマターと称する。
宇宙空間という背景の持つ闇に隠されているのである。
集合魔バルトクロイツは、この比喩を正しいと評価した。つまり、各々人格の“断魔”成分を自身に、すなわち“集合魔”に取り込んだ。
闇に闇を吸い込んで隠した。
そして、何かを待っているようである。人体の形状に戻らない。濃密な生きるインクの様に王室空間を漂う。
「戻れ。相応しくない」
女王は命じた。
「何と?」
異議が室内に満ちる。
「再度封をする。中に入れ」
「封印は壊れた……」
どうやらバルトクロイツは自由が欲しいらしい。対価、というわけだ。
しかし、解放すれば何が生じるかレムリアには見えている。“ダークマター”をも飲み込んだ彼の中では、さながらお家騒動のように主たる人格の主権争いが生じ、バルトクロイツとしての個は存在不可能となるであろう。人間で言う多重人格で、人格同士が喧嘩をする。
それは彼という言わば“生きる封印”の意味が無くなる。集まっているからこそ封として働く。
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