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天使のアルバイト-008-

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「バカな質問と思わないでね」
「ん?」
「ここ、どこ?」
 由紀子は一瞬目を円くしたが、すぐにニコッと笑って住所と川の名前、近隣の私鉄駅の名を言った。
「人間の世界……」
 エリアは呟いた。間違いなかった。これで事態がようやく全て判明した。
 自分は、ここに。そう、この由紀子という娘の言う通り、“落とされた”、のだ。
 気が遠くなり、力が抜ける。これはやはり追放ということか。
「ちょっと……顔青いよお姫さん。大丈夫?」
 由紀子が心配そうに覗き込む。
 絶望がエリアを襲う。自分は堕天使よろしく追放された。
 しかも、“力”を剥奪されて。
「ねえ。お姫さん。寒いの?……」
 由紀子は続けて訊く。しかし、エリアには由紀子の声が聞こえていない。
「もう」
 由紀子が半分怒ったように頬を膨らませ、エリアの額に手を触れる。
 そして。
「うわ!」
 由紀子は驚きの声を上げる。エリアはそこで初めて、落胆に埋没していた自分の意識を引き出し、呆然と由紀子を見る。
 なぜ、彼女が驚いているのか、判らない。
「すごい熱!ちょっと、とにかくウチまで行こう」
 由紀子はエリアの肩に手を回し、抱き起こした。
 そういうことか、と、エリアは思う。理解が遅い。ちなみにそれは、事態の認識に伴い落胆し、張っていた気が抜けたことに加え、高熱による貧血状態が急激に現れたためであるが、普段熱など発しない彼女には、すぐにはそれと判らない。
「おぶってあげる。私の首に腕回して掴まって」
 エリアは言われるまま、由紀子の首に自分の腕を巻き付かせる。今や身体は億劫を通り越し、異様と言えるほどだるい。筋肉の力も失せてしまって“ぐでんぐでん”であり、立つも座るもままならない。
 由紀子がエリアをおぶって立つ。首にどうにか巻き付いた腕を、自分にしがみつかせる。
 

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