【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-84-
光は使って良い。それは、使える光があることを知る者の物言い。
光。それは栄光、或いは王族の威光といった、言わば“なぞなぞ”の類いと思ったが違うのか。本当に物理学の言う光を使うというのか。
「持っても?」
相原は父王の手のひらを指さして問うた。
「ええ。あなたは私の夫(つま)です。部外者だと死ぬけど」
レムリアは代わりに答えた。夫という字を「つま」と読ませるのは日本の古風なスタイル。短歌などでは今でもよく使われる。
相原は、失礼、と言って父王から修理用石材を手にした。それはレムリアが心から彼を身内と認めていなければ“死ぬ”リスクを包含していたわけだが、彼が意に介した様子は無い。
二人の間の信頼の醸成を裏打ちする。
相原は石を見回す。白っぽく石英のようだが、所々緑色のキラキラを含む。
「アクチノライド」(緑閃石)
「我々は、材質までは、把握しておらんのですよ」
父王は言った。1200年前は“同じ石かどうか”は気にしたであろうが、物理学的な分類を可能とする技術力は無い。対し現代の相原はそこを気にしている。
相原は石を手にしたまま、レムリアを見た。
「人の手、人の創意工夫による手段で、光であれば何でもいいんだな?」
「ああ、構わない」
再度の確認には父王が応じた。
相原は上を見た。魔物が出入りした上の穴。
「アルゴ号。周辺問題なければ城内王室真上へ頼む」
レムリアはそれで全てを知った。
相原はアルゴ号の光動力・ビーム類を使うつもりなのだ。
鳥肌が立つ。この王家に伝わる“真理”とされる言葉“その時は光が解決する”。言い伝えが成就する瞬間に自分は立ち会うことになるのか。そして、アルゴプロジェクト参加時に聞かされた“22世紀テクノロジーの先取り”。それはすなわち極めて先進的な技術と、太古伝来の魔法の融合。
『猶予2分請う』
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