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【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-86-

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 相原は喋りながら、円形の蓋に沿って歩き、蓋の縁を銃の筒先で突いて回った。場所により、叩いた響きのトーン、硬さが変わる。
 相原はまず、自らが開けた穴の断面へレールガンを寝かせて一撃した。蓋は現在、端っこをつまみ食いされたピッツァの様な姿だが、その囓られ部分にアルミの弾丸を水平方向の弾道で叩き込んだ。
 蓋がずるりと水平に回転し、ズレる。
 ごとん、と大きな音。
「ああ!」
 レムリアは気付いた。蓋が少し回り、ロックが外れた。
 囓り口から角度にして120度ほど。キラリ光る部位が現れる。
 レムリアは隠し通路へ両親を案内した。
「ドクター、このキラリ部分へエンジンから軽く光圧放射。蓋をひっくり返す」
『アイ。待避せよ。カウント3から。3・2・1……』
 4人は隠し通路へ身を潜めた。
 アルゴ号のエンジンは光子ロケットである。すなわち、光そのものの圧力で推進する。
 その出力を蓋の端部に集中させる。
『目を閉じよ』
「アイ」
 瞼の裏が真っ白になる。
 続いて、風が起こり、ドンと重い音がし、地鳴りが響いて少し体が浮いた。
 裏返った蓋がそこにあった。刻印の魔方陣。5時の方向囓り口に欠損あり。
 相原と父王が同時に身を乗り出して覗き込む。
 蓋裏はそこここに修復した痕跡が見受けられる。四角くなっている箇所は今回同様の修復ブロックで後から繋いだ場所であろう。
「石の溶けた部分がある。ストライエーションっぽいものもある。熱的に溶かしてノミと金槌で懇々と作業したものもある。知恵と工夫と根気が刻まれているよ……船内聞こえるか。プラズマガンを下ろしてくれ」
 太古からの工夫に対し、現代相原の手段はそれであった。なお、ストライエーション(striation)とは、同じ方向の細かい亀裂が並んで見える状況を言い、同じストレスが繰り返し印加されたことを示す。
 

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