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天使のアルバイト-016-

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「あなたの笑顔すごいステキ。お姫様というより……そう、天使だね、天使の微笑み。悩んでるなんて似合わないよ。新しい生活を、今度は自分の意志で、自分の好きなように作って行くんだから。過去は忘れよう。じゃ、段取りしとくから。まずは風邪引き治してね」
 由紀子は一気にそれだけ喋り、立ち上がって退室した。
 エリアは少し呆気に取られながら、しばらくの間彼女の去った襖を見ていた。
 なんて前向きに生きてる女の子だろう、と思う。そして、彼女から元気をもらえたのだろうか、小さな笑みが自然と浮かぶ。
 ただ、ちょっと引っかかるものはある。彼女の外見的印象と年齢の関係。
 単純に外見での判断の間違いはごめんなさいである。でも、そのことと、彼女の前向きさに相関がある気がしてならない。
 しかもその前向きさには、ナチュラルな、というよりも意図して、もっと言うと“無理して”という印象があるのだ。
 
 
 エリアの熱には翌日には下がった。
 そして、その代わりというのでもないだろうが、今度は由紀子が布団の住人になってしまった。
「あの……私がうつしてしまったんじゃ……」
 夕食に呼ばれながら、エリアは母親に訊いた。心配というか、申し訳ないというか。
「違うよ。確かに今まであんたのこと心配していて、治って急に気が抜けて、というのはあるだろうけど。あの子、小さい頃から良く病気してね。あまりにしょっちゅうなんで、医者からも、長生きできない、育たないと言われたくらいなんだよ」
「え?」
 予想外の言葉にエリアは声が出ない。
 冷たく暗いものを背中に覚える。それは母親の言葉に触発された、“何か” が心の隙を突いて忍び寄り、背中に貼り付いた、そんな感じ。
 そのぴたりと付着する“何か”は、他でもない“死”である。すなわち、ある瞬間から先が唐突に闇であり虚無。
 意識精神に怖がれと働きかける。
 

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