【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-88-
熱で軟化したブロックは、ぐにゃり変形し、破損部位に嵌め込まれた。破損部位よりブロックの方が大きいため、型に押し込んだ粘土のように、一部がはみ出た。
ラングレヌスは素手で粘土細工をし、尚残る隙間に押し込み、それでもはみ出た部分はちぎって取った。周囲との境目段差は再度プラズマを照射して溶かし、溶けた部分を銃口部分で混ぜて融合、手でぺたぺた(!)叩いて平滑化させる。
「FSWはイギリスの特許だぞ」
ぺたぺた、叩きながらラングレヌスは言った。それは相原の“溶かして・混ぜる”に対する物言いである。溶接の技法と理解されたい。新幹線電車の構体製造などにも使われている。
「金属じゃねーし。レムリアOKだぜ」
「レーザだね」
レムリアはさすがに手順を理解した。今、一部白紙の魔方陣。
「こっちはいつでもいいぞ」
船からの低い声。その声の持ち主……やはり大男の姿が甲板にある。甲板舷側には柵があり、それは並べた棒の間にワイヤを通したものだが、そうした柵棒のうち一本を台座に使って長大な銃を据え、こちらに向けている。
大男はワイシャツネクタイに迷彩服。黒檀の肌の持ち主。船長、アルフォンスス。
「位置を合わせる。各位は魔方陣の外へ待避」
その意図、モデル化された魔方陣の画像を蓋に投影し、現下刻まれている魔方陣に対し、不足部位をレーザ放って描き足す。
「待避よし」
「了解。照射開始」
パチパチとパルス状の音がし、はめ込んで混ぜた石の部位で若干の煙が生じた。
と、獅子吠えるような、ため息のような、低い声が響く。断末魔、否。
「集魔か」
「恐らく。錠がかかった故かと」
「造形完」
「ありがとうございます」
レムリアは船長に答え、魔方陣の真ん中に立ち、手指を左右に振って呪文を唱えた。
「(……以上月の精霊の名において命ずる。許可あるまでここより出る(いでる)ことを禁じる)」
実際はもっと長いが、終句のみ記す。
「終わった。元通り裏返して」
もう一度エンジン噴射を使う。斯くて、光の力で再度封をし、
伝承は成就した。
「じゃ、みんな居るし、もんじゃ作るか?」
「しゃぶしゃぶは?」
相原は笑った。
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