【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-89-
13
夜半、東京多摩地区。
「そうすると今後は君を迎えに来るのはここか」
見回して船長アルフォンススは言った。丘陵地を開いた住宅地であり、一部残した丘の上に作られた公園である。とは言え草ボウボウの野っ原であり、照明も無いので、夜間は人目を気にしなくて良い。
「ええ、今後ずっと」
レムリアは言い、相原の腕に腕を絡めた。
「これは照れるな」
屈強でストイック。そんなイメージのアルフォンススが相好を崩す。
「まぁでも、たまには自分も正義の味方させて下さい」
相原が加える。
「ふふ。その辺は機に臨み変に応ずということで。君はあくまで一般生活を営む日本の男性だ。そこだけは外さないでくれ。無用な危険は我々だけが負えば良い」
「されど妻を守る夫という立場でもあります。それこそ臨機応変に参加を要望することも」
さりげなく、しかし明言。
それが、好きとか、愛してるといった言葉以上に、重く、強く、レムリアには感ぜられた。
今この傍らの168センチは、自分の残り半生を自ら背負うと言ったのだ。
これほどの、これほどの強い言葉が他にあろうか。男女同権、ジェンダー活動知ってるが、夫君から感じるこの強さ快さは何であろう。
「よかろう」
アルフォンススはそう応じ、男二人は肌色異なる互いの手を熱く握り合った。
「現時点より、状況により船長臨時代行を無期限で命ず。必要に応じ船を独断で呼びつけて良い」
「拝命しました」
「敬語は不要だ。我々は立場同等」
「されど気が引ける。アルフォンスス殿」
「まぁ、好きにしたまえ。では、我々はこの辺で」
「了解」
耳に押し込んだイヤホンをタッチして各人の耳にピン音。
「ミッション・コンプリート」
船が立ち去る。一瞬だけ空気を吹いて浮上し、帆を広げて横にして翼とし、滑空しながら向きを変え、途中から光子ロケットエンジンに切り替え、超高速で西方へと去る。
(次回・最終回)
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