« 天使のアルバイト-014- | トップページ | 天使のアルバイト-015- »

【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-90-終

←前へあとがき→

 

 レムリアはそのシーケンスを、終業の一部始終を、その目に収め記憶に留めようとした。もちろん、アルゴ号自体は今後も乗るであろう。ただ、これまでと立ち位置は異なる。
 それはこれまでの終わり、そしてこれからの始まり。
 オリエント急行に乗って来い……地球全体を瞳に収めたあの時から都合1年半。
 新しい始まりは傍らに共に歩む人。
 ぐいっと引き寄せられ抱きしめられる。
 全身を包まれて息止まりそうな程に抱きしめられる。
「お前が好きだ」
 夫となる人の声が頭の上で聞こえた。
 彼は自分の頭の上に己れの頤を載せている。痛いほど力強く抱き、そして途方もなく優しく、ゆっくりと、髪の毛と背中を撫でる。
 背も肩幅も、広げた腕も、全てが自分を包み込む。
 熱さと、若干の震えと、胸郭の膨張収縮。
 この身任せて共に行く。
 顔を見ようと見上げると、唐突とさえ言える動きで顎をくいっと持ち上げられてキスされる。
 時が止まる。
 首の後ろに腕絡めてぶら下がる。二人っきりの世界で時空が止まる。
「そのままぶら下がって」
 相原は唇を離して自分を抱いた。
 両腕に自分を仰臥させ、横向きに抱いた。
 少しのけぞってバランスを取り、両足を広げて踏ん張り。
 住宅街を眼下に納め、比して星々煌めく天空に向かい、お姫様抱っこで自分を抱えた。
「好きな女こうやって抱きかかえる感想を言葉にすれば、豪奢だ」
 相原はレムリアの目を見て言った。
「この上ない贅沢であり、美しく麗しい。お前世界一の女だ。こんな女他にいるか。絶対に離さない。そして付いて来い。一緒に生きよう。幸せにしてやる……古いな。お前が生きて行くために俺は全力を発揮する」
 相原の心を感じる。43キロは確かに重いがそれが豪華な質量だと彼は評す。
 男が獲得する至高の宝は女だというシンプルな認識。ジェンダー……それは本当は、男女の遺伝子的認識を無視した活動ではあるまいか。
「じゃ、行こうか。いつもの俺んちだけど」
「うん。下ろしていいよ。腰を悪くしたら将来に差し支える」
 二人の時間が、今始まった。
 レムリアは髪を伸ばし始めた。

 

Baby Face/終

|

« 天使のアルバイト-014- | トップページ | 天使のアルバイト-015- »

小説」カテゴリの記事

小説・魔法少女レムリアシリーズ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-90-終:

« 天使のアルバイト-014- | トップページ | 天使のアルバイト-015- »