【魔法少女レムリアシリーズ】Baby Face-90-終
レムリアはそのシーケンスを、終業の一部始終を、その目に収め記憶に留めようとした。もちろん、アルゴ号自体は今後も乗るであろう。ただ、これまでと立ち位置は異なる。
それはこれまでの終わり、そしてこれからの始まり。
オリエント急行に乗って来い……地球全体を瞳に収めたあの時から都合1年半。
新しい始まりは傍らに共に歩む人。
ぐいっと引き寄せられ抱きしめられる。
全身を包まれて息止まりそうな程に抱きしめられる。
「お前が好きだ」
夫となる人の声が頭の上で聞こえた。
彼は自分の頭の上に己れの頤を載せている。痛いほど力強く抱き、そして途方もなく優しく、ゆっくりと、髪の毛と背中を撫でる。
背も肩幅も、広げた腕も、全てが自分を包み込む。
熱さと、若干の震えと、胸郭の膨張収縮。
この身任せて共に行く。
顔を見ようと見上げると、唐突とさえ言える動きで顎をくいっと持ち上げられてキスされる。
時が止まる。
首の後ろに腕絡めてぶら下がる。二人っきりの世界で時空が止まる。
「そのままぶら下がって」
相原は唇を離して自分を抱いた。
両腕に自分を仰臥させ、横向きに抱いた。
少しのけぞってバランスを取り、両足を広げて踏ん張り。
住宅街を眼下に納め、比して星々煌めく天空に向かい、お姫様抱っこで自分を抱えた。
「好きな女こうやって抱きかかえる感想を言葉にすれば、豪奢だ」
相原はレムリアの目を見て言った。
「この上ない贅沢であり、美しく麗しい。お前世界一の女だ。こんな女他にいるか。絶対に離さない。そして付いて来い。一緒に生きよう。幸せにしてやる……古いな。お前が生きて行くために俺は全力を発揮する」
相原の心を感じる。43キロは確かに重いがそれが豪華な質量だと彼は評す。
男が獲得する至高の宝は女だというシンプルな認識。ジェンダー……それは本当は、男女の遺伝子的認識を無視した活動ではあるまいか。
「じゃ、行こうか。いつもの俺んちだけど」
「うん。下ろしていいよ。腰を悪くしたら将来に差し支える」
二人の時間が、今始まった。
レムリアは髪を伸ばし始めた。
Baby Face/終
(あとがき)
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