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Baby Face~あとがき~

この二人がくっつくことが必然だったかどうか、作者のくせに私は知らぬ。
ただ見ていた限り、相原はレムリアに対してあるべき姿であろうとし、それは次第に彼自身を磨いていったと見られる。彼は彼女を守るべき存在にカスタマイズされたのだ。
相原はレムリアのために存在し、レムリアは相原を必要とする。それが成立すれば夫婦は必然である。
そしてその姿は、恋人の蜜月を飛び越し、法律上籍を入れていないだけの文字通り夫婦と言って良い。夫婦の定義は人の数だけ異なろうが、ことこの二人に関する限り一心同体と言っても良いほど強固であり、相互が信頼と絶対の安心を提供し享受している。これほどの強固な男女の仲を私は現実をも含んで多く知らぬ。
“初潮”という事象が女の子を一気に大人の女のステージに引き上げる、そんな現象が実在するのか半信半疑のままに私はこれを書いていた。しかし、これは驚くべきタイミングと言えるであろう、現実でそうしたドラスティックな変化点に遭遇するに至った。果たして私は父ではなく男として意識される(防空識別圏を設定される)対象になった。思えば妻も破水と共に母へと一気にメタモルフォーゼを遂げたのであり、女性の変化点とは案外そうしたものかも知れぬ。比して男の場合、相手を妊娠させる能力を持った程度の認識しかない。精通があろうが無かろうが女の子には興奮するのであり乳触りたいしキスしたい。だから、男の子にはその由来が何なのかキチンと教育し、暴走は他ならぬ大好きなはずの女の子を傷つけることになる。そう、経験に基づき教える責務を父たる男はすべからく有する。21世紀初頭現在の日本はその辺が欠けている。性的にはみな早熟になり、情報は盾も無く手のひらで取れるにも関わらず。
以上、主題の一。
二番目。これを契機に彼女は日本の女の子として新しい一歩を踏み出すことになる。二人結ばれてハッピーエンドと思いきや日本に迫り来る“こころ”を攻めてくる敵に備えるのだという。アルゴ号は物理的な攻撃に対して無敵であろう。比して“こころ”に対しては“こころ”で守るしかない。その敵が破壊するのは日本の価値観だという。しからば、それには彼女の心盤石にして孤独でないことが条件だったのであろう。
これを書いてる時点で日本はまさに物心両面で遠近各国・民族による安全保障上の揺さぶりを受けている。相手は金銭の多少と勝ち負けだけの世界観であり、共存共栄は口先だけの美辞麗句としてだけ存在する。言わずもがなそれらはアルゴプロジェクトの、ひいては彼女の価値観とも相容れない。他人を救うように動くことを基本とすれば争いにはならない。ただ、そうした“善意”と書こうか、善意をブラックホールのように吸収し続けんとする価値観を有する者達もまた存在する。彼らは正も義も無く、虚も実もない。口先だけの美辞麗句を弄して相手から善意を引き出して根こそぎ奪い取る。
彼女はそれを受け止める。そして挑戦するという。
日本の中学の制服を着た、彼女の姿をお目に掛けよう。
但し彼女は魔法使いだ。
2015/7/24 遙か西経より来たる台風の行く先を見ながら

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