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天使のアルバイト-018-

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「ああ、なるほど」
 エリアは頷いた。自分には証明する身分も、履歴書に書くべき過去もないのである。文字通り“降って沸いた”しかもやたら手のかかる娘なのだ。
「ま、とにかく先に食べな。今は訊かない」
「はい。すみません」
 エリアはハンバーグにナイフを通す。恐縮に次ぐ恐縮で、ブラックホールのように縮んで無くなってしまいそうだ。
 “痛感”とはこのことかと思う。自分には守護者どころか、自分の存在自体についてすら、語る資格がないのだ。
 リテシア様。私は思い知りました。
「どうしたの?まずい?」
 うつむくエリアに母親が尋ねる。
「いえ……冷静になってみると、私が勘当されるのも一理あるなって。すいません。冷めちゃいますね」
 エリアは憂鬱を振り払った。せっかくごちそうしていただいてるんだ。今は何も考えず美味しく食べよう。それが始まりだ。
 ナイフとフォーク……どうにか扱える。
 一口。
「美味しいです!」
 その言葉に母親が笑みを浮かべる。そして、実際相当空腹だったのだろう、食べ始めると、鳴りを潜めていた食欲が一気に爆発した。
 良く火の通った挽肉、じわりとにじむ肉汁、それらと絡み合うデミグラスソース。しゃきしゃきとした千切りキャベツと、甘みを有する葉の中の水分。食道をぐいぐいと音を立て、通過し、胃袋へと落ちて行く米飯の塊。次第に重さを増して行く胃袋。食べ進むに従い感じる、“食事誘導性体熱産生”と呼ばれるほんのりとした身体の火照り。
 それらは肉体の感覚・属性であり、畢竟、肉体ならではの快さであり楽しみである。“食えること・食うことの喜び”とはこれか、とエリアは知る。そして、これはこれでいいのだと、開き直りというか、達観に近い感覚を持ってエリアは今の自分を受け入れた。
 

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