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天使のアルバイト-019-

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 人間の娘になるなら、それもまた良い。人間であることを謳歌してもいい。
 “生きている”ことを楽しもう。
 母親が口を開く。
「由紀子も、そのくらい食べてくれるといいんだけどね」
「え?」
 自分の食べっぷりを穏やかな表情で眺める母親のひとことに、エリアは手を止めた。
 少し恥ずかしい。自分がとってもはしたない娘になった気分。
「あ、他意はないのよ。ただあの娘(こ)ホントに食べないから。それに、病み上がりは食べて体力回復しないと。これは命令」
「は~い」
 エリアはこそばゆく思いながら“命令”に従った。母親に怒られるなんて何年ぶりだろう。
 そして結局、エリアは“由紀子二人前”をあっさり平らげた。
「すみません、何か無遠慮にバクバク食べちゃって」
「いいのよ。余った方が困るわ。さ、悪いけど今度はあなたが由紀子のところにこれ持ってって」
 母親が持ってきたのはお盆に載ったプリンとバナナ。
「はーい」
 エリアは喜んでそれを隣室の由紀子に持って行った。
 部屋に入ると、青白くやつれた顔の由紀子が、それでも笑ってエリアを迎え、身を起こす。エリアは傍らに座り、由紀子の肩にはんてんを羽織らせる。
 母親がアップルティを持って来た。りんごの匂い。
 由紀子がバナナの皮を剥く。そこでエリアは口を開く。
「それで、先ほどお尋ねの件ですけど……」
 エリアは身の上を話す。無論、事実を話すことは出来ないし、信じてもらえない。だから“天界”は外国に、カンニングは不登校に置き換えた。
 外国からこちらへ移り、学校へ通い始めたものの、一方的な詰め込み押しつけがイヤで飛び出し、それが原因で勘当された。しかし、今にして思えば、詰め込むのは、“考え方、論理の組み立て方の勉強”であって、それを考えず飛び出した自分が浅墓だった……。
 

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