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【魔法少女レムリアシリーズ】転入生(但し魔法使い)-05-

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「はい?」
 レムリアは小袋の中身をネコにやると、立ち上がり、母親の向かい側に同じく正座。
「あなたはそれで、その類い希な力で、子供達喜ばせてあげようとしてるわけね」
「そうで……わ」
 母親はレムリアを抱き寄せ、抱きしめた。
「素敵な子……おお神様仏様、この女の子はまこと天からの賜り物、人類の至宝。あなたは素晴らしい。この上なく素晴らしい。理想が結晶したような女の子。ありがとう。全人類の母親を代表して私からお礼を言います。子供達のためにありがとう」
 それは、母親が見いだしたレムリアの存在と活動に対する価値と意義であった。
「お母様……」
「他人行儀な。サマ付け禁止」
「母さん」
 充足、その時レムリアに訪れた心理を書くならこの一言である。身体が緩く解けて行く感覚が訪れ、充ち満ちて消えて行く。
 消えて行くのは恐らく公に認めて欲しかった功績、功名心。常にどこかに存在し、しかし自身蔑視していた心理。
“こんなすごいことしているのに”
 涙が出る。そんな心理を抱いていた自分、理解し、言葉に出してくれた母親。
 しかしそれは、この頬伝う一筋で最早充分という認識も同時に持つ。間違っていなかったと自分自身に頷く。
 リスタートの瞬間なのだ。この家の家族として、日本国籍を有した身として。
 
 
 教室ドアがカラカラと開かれた。
「どうぞ」
 女性教員に手招きされ、陽光の満ちる教室に足を踏み入れる。
 床面で反射された逆光で、級友になるであろう彼たちの顔は見えない。
 ワックスされた木の床を、上履きでキュッキュと踏みしめ、中に入る。
 一旦後ろを向いて、ドアを閉め。
 振り返る。今度はハッキリ見える2年3組36名。
「あいはら、ひめこです」
 彼女は、言った。
 その声は水晶のように光り輝き、張りのある……と表現しようか、少し硬めの音質で教室に響いた。
 
つづく

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