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天使のアルバイト-022-

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 震える肩をしっかり支えながら、そんな由紀子が自分に内心を吐露した、その意味の重大さを思う。それは彼女が、自分の前なら、ありのままで構わないと思ってくれた証し。
 落ちていた女の子“エリカ”を、理解者であると、友人であると、認めてくれた、ということ。
 彼女を大切にせねばならぬという責務を感じる。そしてそれは何のことはない、“本業”で仰せつかることではないか。
 その認識は、ハッとするような感情と共に、一つの自覚をエリアに与える。思考の焦点が定まり、シャキッと整った。そんな感じ。
 背後で襖が開く。
 エリアはそちらに目をやる。由紀子の様子が変わったため、母親が何事かと見に来たのである。
 エリアは口に人差し指を当て、黙って、の意“しー”の仕草をした。母親は指で輪を作り“ok”を出し、そのまま襖を閉じた。
 由紀子ちゃん。私思うんだ。普通じゃないってのは、ありきたりじゃないってことだよ。
 そういう意味では、私も多分、普通じゃないね。そんな私で良ければ、あなたの友達でいさせてよ。
 同じ“普通じゃない”だからさ。最も、私は出来損ないの勘当者なんだけど。
 
 
 錠がガチャンと開く。
 ついで、相当長いこと動いていなかったのだろう、蝶番がギイと軋んだ音を立て、ドアが開いた。
 真っ暗な室内。沈滞した空気。湿っぽさに混じるわずかなカビ臭。
「うわあ。こりゃ思った以上にひどいやね」
 母親が呟く。開いたドアは今後のエリアの部屋。そう、彼女が“月1万円。但し土日は店で手伝い”で借り受けたアパートの一室である。
「窓開けよう。由紀子は物置からほうきとちりとり」
「はーい」
「うわあ。キノコでも生えてんじゃないのかね」
 母親の声に由紀子がくすくす笑いながら、鉄の階段をカンコンと軽快に下りてゆく。その間にエリアは母親と共に部屋に入り、締め切って何年経つのか、雨戸と窓を開きにかかる。
 
つづく

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