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天使のアルバイト-023-

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 じっとりと湿った畳。ふやけており、乗れば沈み込みそうで、それでいて表面は砂ぼこりでザラザラしている。スリッパ持参だがそれで正解。
 窓がガラガラと開かれた。
 室内に溢れる白い外光。
「ありゃりゃ」
 照らし出された光景に母親が半ば呆れた声を出す。そこはキノコこそ生えていなかったが、壁にはあちこちに黒カビが繁茂。
 と、そこへ掃除用具を持った由紀子が到着。
「はいほうき……うわ、何これ」
 部屋を見回して絶句。
 すると、母親がさながら彼女の前に“立ちふさがった”状態で。
「見たね。見たら何したい?綺麗にしたいね。ハイ今度はカビ取り洗剤」
「そんなぁ」
「理由もなく頭ごなしに一方的なのがオトナというもの。ハイ、諦めて持ってくる」
「ぶう!」
 由紀子が不平そうに言い、それでも掃除用具をその場に置くと、洗剤を取りに回れ右。
「やれやれ。こんなホコリだらけの場所にいたら、またどんな病気背負い込むやら」
 由紀子の足音を聞きながら、母親が言った。
 エリアはハッとして母親を見た。
「かと言って『家にいろ』といっても聞かないだろうしね」
 母親は呟きながら、ほうきで畳を掃き始める。エリアはそんな母親を感心しつつ見つめる。由紀子の“手伝いたい”という気持ちと、母としての“ホコリだらけの場所にいさせたくない”という気持ちとを勘案した結果が、今の指示だったのだ。
 ……相手の気持ちと現状とを勘案して臨機応変に結果を出す。あのテスト問題が求めていたのはこれ、たった今母親がなした行動ではなかったか。
「何ボッとしてんの」
 考え込むエリアを母親が呼んだ。
「え?」
「ここ誰の部屋?なのに掃除してんのは誰?」
「あ、すいません!」
 エリアは頭を下げると、手持ち用の小さなほうきとちりとりを持って押入のふすまを開けた。
 

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