天使のアルバイト-024-
「うわ……」
開けた瞬間は“噴火”という言葉が思い浮かんだ。凄まじいホコリである。せき込むエリアを母親が見る。
「ホコリ吸わないようにね。何年前のか判ったモンじゃないから。マスク使って。……あの子は洗剤ひとつ持ってくるのに何やってんだい」
母親がポケットからマスクを取り出し、ドアの方を見る。
その時だった。
エリアは、心臓のあたりで、誰かが、何か言ったような感じを覚えた。
それは警告。そして警告の中身は。
“由紀子ちゃんに”
「由紀子ちゃん!」
次の瞬間、エリアは声を出し、部屋を飛び出した。ほうきを放り出し、裸足のまま鉄階段をかけ下る。
「エリ……?」
母親は最初、エリアの行動を、首を傾げて見ていたが、すぐにそれと気付いた。
「由紀子がどうしたって!?」
エリアの後を追って階段をかけ下る。
「由紀子ちゃん!」
先に下りたエリアがその状況を見つける。物置の傍らに四つんばいで動かない由紀子。
胸元を押さえ、荒い息をし、顔は血の気が引いて真っ白。
「由紀子ちゃん、ちょっと、大丈夫!?」
顔を覗き込んで肩を揺さぶる。スローモーションのような動きで由紀子がエリアに目を向ける。
「大丈夫……ちょっと……貧血……急に立ったから……よく……あること……」
元気のない笑み。
そこに母親が追いついた。
「しばらく横にならなきゃ……掃除中断。エリカちゃん。悪いけど肩貸して」
状況を見て母親がさっと指示を出す。慣れた感じであり、なるほど由紀子自身言う通り、良くあることらしい。
そして二人で由紀子の両脇を抱えて立ち上がる。エリアが大声を出したせいか、住民達が何ごとかと出て来て見ている。
「何でもありません。こちらの不手際です。失礼しました」
母親が頭を下げる。
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