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天使のアルバイト-025-

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 住人達は何か言いたげな顔をしながら、個々の部屋に戻って行く。二人は足のもつれる由紀子をどうにか階段の上まで運び上げた。
 部屋に連れ込み、新聞紙を敷いて仰向けに寝かす。
「ごめん……あたし何しに来たんだか……」
 ぜぇぜぇと荒い息しながら。
「昼寝だろ」
 即座に母親が言った。
「ひどーい。えーん」
 由紀子が泣き真似。
 エリアはそのやりとりに吹き出してしまった。母親が“どうということはない”的な答えを言って、深刻な雰囲気を振り払い、由紀子を安心させるとは思った。しかし、そう来るとは思ってなかったからだ。
「あはは……」
「エリカちゃんまでひどい。えーん」
 大泣き真似。
「だって……」
 そこで母親が立ち上がる。
「何か飲み物買ってくるよ。エリカちゃんは紅茶あたり?」
 母親はサンダルを履きながら訊いた。
「はい。じゃあ」
「由紀子はスタミナドリンクだね」
 母親は有名なブランド名を口にした。
「そんな……あたしも紅……」
「じゃ行って来るから」
 由紀子に言い返すヒマも与えず、母親が部屋から出て行く。
「面白いお母様だね」
 エリアは由紀子に向かって言った。最初は素っ気なくぶっきらぼうだと思ったが、どうもそうではないようだ。傍から見てると“この親にしてこの子あり”。
 由紀子が苦笑。
「面白すぎるよ。私は普通の母親でいい」
「でも、由紀子ちゃんのことホントよく考えてると思うよ。感心するくらい」
 由紀子がそこで母親の置いていったほうきを一瞬見やる。
「そうかなあ」
「そうだよ。家の中で会っても会話すらしない、冷戦みたいな親子になりたい?」
 エリアのその発言に、由紀子はハッとしたようにエリアを見た。
「それって……」
 エリアは気付く。由紀子は今の自分の発言を、“エリカの家”の状況と受け取ったようだ。
 

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