【魔法少女レムリアシリーズ】転入生(但し魔法使い)-08-
「あらお菓子の持ち込みは校則違反よ」
言いつつ、担任奈良井は受け取って、あめ玉を口に放り込んだ。
「驚きました。席は……近眼とか無いと聞いたので後ろにしましたが、いいですか?」
「はい」
奈良井が手を伸ばして示し、呼応して教室後方、女の子が控えめに手を上げる。その隣に空いた机。
その挙手した女の子、その表情に彼女は胸の痛みを覚える。
その女の子だけ明らかに雰囲気が違う。その同調圧力に押し出されたというか、おどおどした感じ、及び孤独。
彼女は女の子にVサインを作り、ウィンクして応じる。
バッと野生な視線が集中するのを感じる。彼女は魔女の属性として超常感覚……テレパシーの類いを一式備えるが、能力の曰く、今の自分の仕草はこのクラス男子生徒を虜にした。
そして、能力は集団生活に背を向けフリースクール……に至った一因でもあるが、色々無用なことが判ってしまう。スイッチみたいに切れるのか、切ってみようか。ただ、例えば相原家では特段この力の存在出しゃばってこない。自分が家族に組み込まれているからだろうか。されば、この教室に受け入れられれば、同様に存在感消えるか。
逆に言うと、自分なりにこの状況警戒しているのか。
「よろしく~。こんな奴です~」
通路両脇の目線に声を掛けながら、彼女は今日からの自席に向かう。机は縦8人で5列が基本のようで、最後部に3人分の空間が残っている。男女の座り方には統一性はなく、完全にばらばら。
スポーツでよく見るハイタッチのように手を出してきた女の子がいたので手のひらを合わせる。その仕草がきっかけか、或いは加速したか、自分の姿を、一挙手一投足を、男子生徒らの目線に追われているのを感じる。まるで遙かなる憧れを見つめるように、しかし食い入るように。前から後ろから。まるで目線という名の圧力にやんわりと包まれているよう。
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