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天使のアルバイト-027-

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「コンポはあたしの……ごめんねお古で」
 由紀子が言った。
 エリアは涙が出そうになるのをこらえながら、それでも嬉しいので笑顔で荷物の搬入を見ていた。
 道が開けた……そんな気がする。
「あの……あと私が自分でやりますから」
 勢い込んでエリアは言った。
「掃除して、整理して、これ以上お手間を取らせるつもりはありません」
 実際、この上掃除手伝ってもらうなんて気が引ける。
「あ、そう?OK判ったよ。じゃこれ部屋のカギね。夕食用意しておくから、終わったらいらっしゃい」
「はい」
 エリアは答えた。優しさは人を元気にする……どこかでそんな文言を読んだ気がする。
 
 
 その晩、エリアは由紀子の父親とも顔を合わせ、忙しい土日に店……不動産屋で雑務を手伝う代わりに、朝と夜の食事、および洗濯と入浴を由紀子の家で済ませて良い許可を得た。
 そして今は夕食。父親がエリアを見てニコニコしている。
「いや~いきなりこんな可愛い娘が増えたらお父さん照れちゃうな~」
 日溜まりの猫が目を細めるが如く、父親は額にしわを寄せて感想を述べた。アルコールが入ってほろ酔い加減のせいもあり、いわゆる“でれでれ”状態。
 由紀子はあきれ顔。
 しかし、父親は由紀子の表情が目に入っていない。
「ほん……っと、お姫様か天使って感じだなぁ。こんな女の子が世の中にいるんだねえ」
 エリアを文字通り“眺め”ながらコップのビールをゴクゴク。それは“視覚的おつまみ”以外の何ものでもなく、公衆の場では社会通念上どうかと思われる行動ではある。
「……恐れ入ります」
 エリアは恥ずかしくて“耳まで真っ赤”。こうも見つめられたことはなく思わず目を伏せる。見つめられながらの食事は進まないもんだ。
「えーえーどうせあたしは病弱ブスですよ」
 由紀子はエリアをチラッと見てからひねくれて見せた。
 

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