天使のアルバイト-034-
「馴れてきたかな?」
「はい」
「じゃぁ次。お菓子の入荷があったから並べて。裏に松原(まつばら)ってのがいるから、POS(ぽす)登録の済んだものを棚へ」
店長は精肉コーナー奥のドアを指差した。押すだけで開き、バネの力で勝手に閉まる。その向こうは準備や包装のスペース。ちなみにPOSはポイント・オブ・セールス……販売時点管理システムのことを言い、“バーコードでピッ”でおなじみであろう。登録とは、そのレジでピッをやるために、商品を在庫品として登録する作業のことだ。この店は商品をカートン単位で購入しており、入荷したカートンをコンベアに乗せると、途中でバーコードを読み取られ、カートン単位で登録されるというシステム。
ドアを通って裏の荷受所に行くと、シマシマTシャツの若者が、コンベアから次々に菓子の箱を下ろし、台車に積み上げている。
「陳列?」
彼はエリアに気付き、チラと見、しかし作業は続けながら言った。
「はい。お菓子です」
「その赤台車OK」
「わかりました」
赤台車、と言っても真っ赤に塗られた台車があるわけではない。ただ、手すりに赤いテープの巻かれた台車があり、お菓子のカートンが3つほど乗っている。
「これですか?」
「そう」
見もせずに言われたが、どこに何が把握していると言うことであろう。エリアは正しいと判断して引き出した。
「失礼しま~す。台車通ります~」
客に当てないよう注意しながら台車を転がす。客は商品に意識が向いており、通路を行く他の物には注意を払っていない。従って自分の方が客の進路を予想し、台車の動きをさばく必要がある。
ちなみにエリアが並べようとしているのは、お菓子と共にアニメキャラクターのカードが入っている商品である。このカードをコレクションするのが流行っており、畢竟、お菓子は人気商品だ。
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