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2015年12月16日 (水)

天使のアルバイト-036-

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「……申し訳ありません。わたくしの不行き届きでした」
 エリアは言葉を飲み込み、まず頭を下げた。
 言い訳がましいことは一切言わない。事実を言えば、「うちの子のせいにするのか?」と逆上されるのが目に見えている。
「勝手に渡すなんて何事よ!ほら洋平(ようへい)!返しなさい」
「ちがうもん、おねえちゃんがくれたんだもん。やだー!」
 絶対離すまいとお菓子を握りしめ、涙ボロボロ流して抗議。
「どうしてくれるのよ!そこまでして売りつけたい!?」
 申し訳……エリアはもう一度言おうとし、こうなるとペコペコしているだけでは解決しない事に気付いた。
 とにかくお菓子を手放してもらうより他ない。パッケージが破損したら売り物にもならないだろうし。
「洋平君」
 エリアはしゃがみ込み、微笑みかけた。
 泣きじゃくる男の子がエリアに目を向ける。
「これね、そうやってぎゅーっと持ってると、壊れちゃうんだよ」
 途端、男の子はハッと気付いたように泣くのをやめ、手の力を緩めた。
「おねえちゃんに貸してくれるかな。誰にも買われないように、ここに隠しておいてあげるから。その間にお母さんと相談して」
 エリアは陳列棚の一番奥に空間を作り、指差した。
「……わかった」
 手のひらを広げると、男の子はお菓子をエリアに渡した。
「ありがとう。内緒ね」
 ウィンクして口に指を当て、“しーっ”。
 エリアは棚に菓子を戻し、他のお菓子で覆い隠した。こういう事はその場を納得させることが大事で、あとはどうにでも誤魔化せるであろう。それは、お菓子を簡単に買い与えないような母親なら、理解しているだろう。ただ、だからってウソは良くなく、ゆえにエリアも“隠しておく”“相談して”だけしか言っていない。嘘も方便と言うが、嘘では無い“方便”そのものである。
 

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