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【魔法少女レムリアシリーズ】転入生(但し魔法使い)-19-

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「人は人。気にしない。行こ」
 繋いだ手を少し引っ張るようにし、ゆっくりと歩き出す。それでもレムリアがやや早いので、逆に溝口を先導しているような感じになる。
 昇降口のガラス扉を押し開き、空気冷たい外へ出、校舎の日陰を校門へ。学校は住宅街の西端に位置し、道は校門前で直角に曲がっている。従い通学路は右へ真っ直ぐか、前に真っ直ぐか。みんなバイバイあっちへこっちへ。
 二人は前へ真っ直ぐ進む。方角的には北である。校舎の陰から日向へ出、自分の影を追うように少し行くと“造成せずそのまま残した丘”がある。含んで丘の一帯は公園になっており、遊歩道とベンチが少し。
 その丘、草むらの中の遊歩道を歩く。とはいうものの、時節柄枯草色が一面に広がり、緩い風に揺られて葉っぱ同士が触れあい、カサカサ。
 陽の光暖かだが、空気自体はそうでもない。1月初旬の東京多摩地区は最も寒い時期と言って良く、日陰では日中でも5度以下など、ままある。
 小道に、草むらに、人影は無い。同じく小学校も短縮授業のはずだが、良く目にするそうした子供たちの姿も無い。
 丘の向こうは5階建てのコンクリアパート群。ベランダに白い布団や洗濯物が見えているが人の姿無し。
 人口40万新興住宅地で、人の目線が周囲に皆無。
 何か寂しい。話題が欲しい。レムリアが思ったその時。
「あの!」
 それは溝口のこれまでの印象とは違う強い調子。
 引く手を強く握って来、彼女は立ち止まった。
「ん?」
 レムリアは振り返る。
 そして、知ってしまった。
「あの……変なこと言うと思うけど、素直に言うね。あなたが好きになった」
 それは、友達として、ではない、重い告白であると、レムリアはすぐに気付いた。
「驚いてる?」
「いいえ」
 

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