【魔法少女レムリアシリーズ】転入生(但し魔法使い)-20-
「意味、判ってる?」
まばたきもせずレムリアを見つめる、その真っ直ぐな瞳、勇気を駆使したと判る呼吸、同期して上下する肩、額には汗のにじみも。
比して、レムリアは、静かな瞳で。
「多分、相当数の女の子は、私と同じ立場にあったら、逃げるか、あなたを避けるでしょう」
それは、彼女がクラスで波動が異なる解でもあった。
「理解されない気持ちでしょう」
すると、溝口の目から頬へ涙一筋。
「だよね、ごめんね……」
同性愛。言葉で片付けてしまえば簡単である。ただそれは恐らく予断を含むレッテルに過ぎないことを意味する。
一方で彼女はこれまで抱えてきた思い、気持ちを吐き出す術を持たなかった。受け入れてもらえる場所を持たなかったことは確かであろう。
レムリアは、握られた手を、離しはしなかった。
「親御さんや先生、クラスのみんなは知ってるの?」
溝口の説明によれば以下の通り。小さい頃から“女の子のお友達”に特別な思いを抱き、その旨口にしてきた。しかし、その結果、彼女らは次第に自分からは離れていった。
だから、経緯を知る者からウワサのレベルで周囲に浸潤しているであろう。対し、親は半信半疑。教員はウワサは聞こえているであろうが、明確に告げたことは無い。
“波動の違い”は当然だ。彼女は自己認識を言った上で、
「なのに……私……なんでか知らないけど……あなたなら受け入れてもらえる……急にそんな風に思っちゃって……変、だよね。転入生に初日からそんな」
「座って話さない?」
レムリアは丘の上、赤い屋根の四阿(あずまや)を背中越しに指さした。
この丘は何度も来ていて目をつぶってでも歩けるが、四阿を使ったことは無い。近づくと赤い屋根は塗装が剥げかけ、中のベンチは薄いブルーに塗られているが落書きとタバコの焦げ跡。
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