【魔法少女レムリアシリーズ】転入生(但し魔法使い)-21-
屋根裏にはクモの巣が幾重も掛かり、枯れ葉が絡まり、やはりスプレーの下品な落書き。
「多分、クラスの女子は、相当な確率で相当な人数が知っているでしょう」
レムリアは感じたままを素直に口にした。
ベンチに腰を下ろし、隣に座るよう促す。
溝口は、恐る恐る、ぎこちない動きで、隣に座った。
「すごい女の子だなって」
彼女はまっすぐ前を向いたまま、言った。
「ポジティブで、キラキラしてて、しかも、すごい美少女。こんな、それこそお姫様みたいな女の子本当にいるんだなって。もう、気持ちが止まらなくなっちゃって」
「フィアンセが、います」
レムリアはまず言った。このネタになった時、彼女はトイレに行っていて聞いてないはずだからだ。
「えっ……」
少なからぬ驚きと、目線が返る。
が、ショックを受けて走って逃げ出す、という感じでは無い。
それは逆に溝口が抱く“女の子への思い”がある意味本物であると共に、男女間に成立する性行為を経て結婚して、とは違うものだとも判断できた。
「結婚相手……」
「そうです。私が16になり次第籍を入れる約束です。もっとぶっちゃけ言うと彼の家に居候して通学してます。指輪してないだけです」
「そうなんだ……」
溝口はうつむいた。ショックを受けたから、であるが、その真意は、
“自分では対抗できない相手がいる”
というもの。失恋とはニュアンスが異なる。なぜならレムリアは彼女の気持ちや思いを受け止めたからである。門前払い、ではない。
レムリアは内心頷くと共に、グラスハープ奏でるような繊細な対応が必要であると認識する。同性を好きになる……その同機は色々あろうが、彼女は生物学的に性的なもの、ではないようだ。一方で友達や憧れの延長線上でも無い。“真剣に好き”なのである。あまた子供達に接し、あまた老若の女性に接して来たが、女性から、女の子から、言われたことは無い。調べたことも無い。調べても無駄だろうという漠然とした確信はある。すなわち、個々で最適解は異なるからマニュアル的な対応は難しい。どころか自分のようなテレパス持ちが先回り先回りして受け止めるくらい必要な気がする。
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