天使のアルバイト-040-
「でも常時エヘラエヘラしてたら変な人だからね。例えば不機嫌そうな子がいた時とか。ついで、でいいのよ。ちょっと笑う。それでいい」
御意。先輩各位仰ることは少しずつ違うが、それは恐らく、全体を見渡して適当な落としどころを自分で見つけろ、と言うことであろう。
「はい。ありがとうございます」
エリアが答えると、主任は肩をぽんぽんと叩いて去った。
その後は淡々と雑務をこなす。商品陳列、値引きシール貼り、POP(ぽっぷ:お買い得!などの告知)のセッティング、目立つ汚れの掃除。まずは店の概況把握と接客に馴れることであり、単純作業が多い。
とはいえ、結構いろんな仕事があり、出来事が起こる。
そして終業。
“客は店員の思った通りには動かない。しかし、店員は客の思った通りに動かないと叱られる”
初日、エリアが得た教訓をひとことでまとめるとしたら、こう書けようか。
いろんなトラブルが記憶に刻まれている。10時からのタイムサービス、タマゴのパックを取ろうとして落として割り、商品の積み方が悪いと怒る老婦人(慌てないで下さい)。15時過ぎ、夕刻より店で出すからと餃子のパックを40個も要求し、急がせた上に大量だから値引きしろと言って怒るラーメン屋の店主(自分で作れ)。
エトセトラ……エトセトラ……。
「はあ」
閉店後、エリアは従業員休憩室の椅子に座り込むと、制服を脱ぐのも忘れて、しばらくぐったりした。
人のことを考えて行動するのって、こんなにも疲れるものか。
そこへ誰か一人、休憩室に入ってくる。
店長。
「よ。どうだった初日は」
お得意のポーズらしい腕組みスタイルで尋ねる。少し威張ったような調子だが、ラグビー部主将を経ての習い性とか。
「疲れました。大変ですね。お客様の応対をするというのは」
エリアはため息混じりに言った。
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