天使のアルバイト-041-
店長は頷き、
「そう。自分が客だったらどうして欲しいか、それを常に考えていないとならない。でも、良くやったよ。特に小ちゃい子供のいる奥さん族には好評だったよ。あの金髪の娘のおかげで子供がご機嫌になりましたって」
「そうですか?」
それは幾度となく聞かされたこと、ただ、失敗も多く帳消しにされたと思っていたこと。だが、店長はそこは言わずに、良いところだけを褒めてくれた。
ちょっと嬉しい。勿論それは由紀子宅に代表される自分がもらった沢山の親切、その延長線に属するのかも知れない。
なれば、今後は少しずつでも返して行く“ターン”であろう。
果たして店長は大きく頷く。そして少しふざけて。
「そうですよ~。あの金髪の娘がニコッと笑っただけで泣きやみましたって。君……ちょっと不思議な感じがするなって思ったけど、子供達が泣きやんだのもその辺かな?」
「そんなことないです。ただ、小さい子が好きなだけで……それを感じ取ってくれてるのかな?」
エリアははにかんだ。その言う通り、子供達が泣きやんだのは、彼女の素直な気持ち……小さい子が好き……を無垢な心ゆえに見抜いた結果、であるとするのが正確であろう。が、傍目には店長の言う、彼女がまとう“不思議さ”も多少は寄与しているかも知れぬ。
「それで…どうだろう。明日以降も来てくれるかな?」
店長は訊いた。
エリアは頷く。拒否する理由はどこにもない。
「ええもちろん。大変だけど自信もつきました。私でもやれば出来るんだなって」
笑って答える。たった今の自分の素直な気持ちである。自分だったらどうして欲しいのか。カンニングしなくたって、答えは書けたのではないか。
自分は恐らく、なまじ“すぐ判る”能力があるがゆえに、“考える”という遠回りをせず短絡しようとしたのだ。“使者”の心得として再三言われる“人間にない能力を持つが故の落とし穴”に入ったのだ。
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