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【魔法少女レムリアシリーズ】転入生(但し魔法使い)-23-

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「大丈夫だから。私ここにいるから」
 学生カバンから包帯を取りだす。失神している全裸男の背中、腰椎を踏みつけ、痛みであろう、ビクリと反応を得たところで、まず右手と左足を背中側に引っ張り、縛って結んでしまう。
 その上で、左腕の上に座り込み、引っ張って肘関節を痛めつける。柔道に覚えのある方は“腕挫十字固め(うでひしぎじゅうじがため)”をご存じであろう。あれを俯せの状態で実施したに等しい。これで、最早痛くて力は入らず、立ち上がることは恐らく不可能。
 早い話ケガさせたわけだが、知ったことでは無い。
「おおい君たち大丈夫か」
 走ってきたのは高校生とみられる背の高い少年。件の息子氏であろう。金属バットを持っている。
「いやあああああ!」
 その姿に溝口はまたぞろ金切り声を上げた。ただそれは誤解。
「大丈夫、彼女は男性不信なだけ。変態が動かないようにお願いします」
 レムリアはバットの彼に“踏みつけ”を依頼し、身を翻して溝口を抱き留めた。
「大丈夫だから。動けなくした」
 羽織っていたカーディガンで目線を覆い、気づく。
 抱き上げながら彼女の身体の向きを変え、自分の身体を入れて男達の視線を遮り、カーディガンを脱ぎ、彼女の腰元に巻き付ける。
 濡れたスカートが見えないように。
 続いて、通報を依頼した奥様が降りて来、更に程なくして、パトカーのサイレンが聞こえてきた。
 
 
 1月11日火曜日。
 成人の日に伴う3連休明け。
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
 彼女レムリアが家を出ると、ドアから数段の階段の下、門扉の前で溝口が待っていた。
 小さな笑顔。この娘の笑顔を初めて見た気がする。
 ちなみに、変態騒ぎの後、彼女は高熱を発して伏せっていたという。
 母親が菓子折片手にお礼に来たのだった。そこで明らかになったのは、溝口家は母子家庭であり、その背景には、元・夫氏によるDV。家庭内暴力があった。
 

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