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【魔法少女レムリアシリーズ】転入生(但し魔法使い)-24-

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 このことは他人に明かしたことは無いという。だが、命の恩人ともなれば話は別と。
 それらが溝口の心理に“女の子に対する特別な気持ち”を生んだのか、関係ないのか、それは判らぬ。ただ、男性拒否の根源はそれとして間違いないであろうし、“特別な気持ち”を加速させた可能性はある。ともあれ、自分がそばにいた方が良いように思う。それがレムリアの結論。
 門扉を開く。溝口がわずかな距離を駆け寄って来、手を握ってきた。
 その天真爛漫とでも評すべき笑顔は幼児のそれである。そこでレムリアがまず思ったことひとつ、この娘は“友人関係の構築”を幼稚園レベルからやり直し始めたのではないか。
 環境の故に十分な心理的発達機序を辿れなかった心は、その条件が整うと一旦退行してやり直すことがままある。例えばレムリアは孤児院でマジックショーを良くやっており、その際、里親が見つかって云々、の話に接するが、里親の元で赤子のように振る舞う子があると聞く。それと同じである。簡単に言うと“甘える時間”が不十分。そしてそれは、彼女の恋愛心理を理解し、友人になろうとする者に対し、もう一段の理解を要求する。この二段目“幼い振る舞い”で去った者も過去、あるのではないか。
 テレビやアイドルなど、他愛もないお喋りをするうち学校に着く。黙して一転饒舌そのもの。要した時間も金曜の比ではなく、靴の履き替えやその他所作もきびきびと手際が良い。それは前向きの心理が彼女の中に発した証左。
 それは良いこと。レムリアは自分自身嬉しくなって笑った。
 教室に入るまでは。
“レズ”
 自分の机に、油性ペンで大書き。
 ほう……半分感心という感じで出てきた感想がそれであった。転入生が異分子排除の心理の故にいじめのターゲットになる例は自分自身接したが。
 

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