【魔法少女レムリアシリーズ】転入生(但し魔法使い)-26-
もがき逃れようとする彼女を、より一層強い力でレムリアは引き留める。ここは細い彼女と自分とで地力の差が物を言った。
彼女の心理は良く判る。自分は恐らく、彼女の“女の子に対する気持ち”を知った上で、尚、友達として対応した最初の事例と言うことであろう。
その友達を誹謗中傷のターゲットにしてしまった。
だからどうした。死ぬほどのことか。
私は傷などつかない。
「消えるなら、一緒に消えましょう」
レムリアは提案し、学生カバンに手を伸ばした。
「え?」
溝口の身体から力が抜け、振り返る。この状況でかほど想定外の言葉もあるまい。
もう飛び降りたりするまい。レムリアは確信を持ってカバンの中のものを手にした。
軍が持つようなゴツい無線機……を思わせる通信端末。
衛星携帯電話。
「校則違反で」
アンテナを伸ばし、発呼。
「私です。昨日の今日で恐縮ですが見えてる座標位置にお願いできますか?……いえ、副長だけの方がむしろ好都合。では」
「どこへ……」
「警察でも、学校でも、PTAでもないよ。風が吹くから降りて屈んで」
手を伸ばすと、溝口はその手を握って返し、彼女の指示に従った。
天空西方より流れ来る白銀の流星一閃。
朝空を横切る流星は学校上空で止まるや、白銀の光を一旦消した。すると程なく、上から吹き降りてくる暴風。
「わっ!」
バランスを崩して倒れ、ともすれば吹き飛ばされそうになる。
「大丈夫」
しゃがんだまま抱き寄せ、包む。
風が収まり、何かが日射しを遮る。
レムリアは溝口の手を引き、立った。
船があった。
中世大航海時代を思わせる、3本マストの帆船が唐突に学校屋上に出現した。
「これ……」
船体側面に扉が現れて開く。中には神話の女神を思わせる白い装束の女性。
「スロープを出しますか?」
扉と屋上との間には1メートルほどの段差。
「いえ大丈夫」
レムリアは溝口の細っこい身体を“お姫様抱っこ”で抱えると、女性の傍らへ運び込んだ。
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