【魔法少女レムリアシリーズ】転入生(但し魔法使い)-27-
続いて自分も船の床に手を掛け、よじ登って乗り込む。
立ちながら、耳の穴に耳栓様の小さな機器をねじ込む。
ピッ、と機器が音を発した。
ピッと音が返り、扉が閉まり始める。
「これは……」
床面に仰向けに寝転んだまま、様相を見上げ、見回す溝口。
「宇宙航行帆船アルゴ号」
レムリアは答えた。
手を引き、立ち上がらせる。そのまま舷側部に設けられた通路を船尾方向へ向かう。
大きな扉があり、城の玄関を思わせる両開きのそれは少し開いており、レムリアはそこから中へ入る。
アルゴ号の操舵室であった。彼女らは船内左舷より操舵室に達しており、左手に大きなスクリーンが外界を映している。
右往左往する担任奈良井の姿が見える。
「これを。翻訳機」
レムリアは溝口に同様の耳栓機械を渡し、耳に押し込むよう促す。以下、実際には、レムリアと溝口相互の会話を除き英語である。
「向こうから私たちは見えていません。光学迷彩というSFに良くある装備で姿を隠しています。副長、PSC(ぴーえすしー)で動かします。許可を下さい」
「許可します」
白装束の女性……副長“セレネ”が背後で応じ、溝口が振り返りその高身長を見上げる。
一方船はスクリーンの映した挙動より、学校屋上から浮上したと知れる。
この船は離着陸時に風圧で動く。なので応じた風が周囲には吹き荒れる。
担任奈良井が屋上でバランスを崩し、フェンスにかじり付く。
「INS(いんす)使用。通常ルーチンに倣い東北東へ速度70」
「了解」
レムリアが言って、副長が返す。程なく画面がぐにゃりと変形……印刷された写真をくしゃっと丸めるようになったことは、溝口にも見えたであろう。
が、次の瞬間に映っているのは海の上であり、しかも、スクリーンの巨大さ故にその視界に地球の丸みが一部反映されている。丸みを帯びた水平線が見える高度を、船は圧倒的な高速で東進している。
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