« 天使のアルバイト-042- | トップページ | 天使のアルバイト-043- »

【魔法少女レムリアシリーズ】転入生(但し魔法使い)-27-

←前へ次へ→

 
 続いて自分も船の床に手を掛け、よじ登って乗り込む。
 立ちながら、耳の穴に耳栓様の小さな機器をねじ込む。
 ピッ、と機器が音を発した。
 ピッと音が返り、扉が閉まり始める。
「これは……」
 床面に仰向けに寝転んだまま、様相を見上げ、見回す溝口。
「宇宙航行帆船アルゴ号」
 レムリアは答えた。
 手を引き、立ち上がらせる。そのまま舷側部に設けられた通路を船尾方向へ向かう。
 大きな扉があり、城の玄関を思わせる両開きのそれは少し開いており、レムリアはそこから中へ入る。
 アルゴ号の操舵室であった。彼女らは船内左舷より操舵室に達しており、左手に大きなスクリーンが外界を映している。
 右往左往する担任奈良井の姿が見える。
「これを。翻訳機」
 レムリアは溝口に同様の耳栓機械を渡し、耳に押し込むよう促す。以下、実際には、レムリアと溝口相互の会話を除き英語である。
「向こうから私たちは見えていません。光学迷彩というSFに良くある装備で姿を隠しています。副長、PSC(ぴーえすしー)で動かします。許可を下さい」
「許可します」
 白装束の女性……副長“セレネ”が背後で応じ、溝口が振り返りその高身長を見上げる。
 一方船はスクリーンの映した挙動より、学校屋上から浮上したと知れる。
 この船は離着陸時に風圧で動く。なので応じた風が周囲には吹き荒れる。
 担任奈良井が屋上でバランスを崩し、フェンスにかじり付く。
「INS(いんす)使用。通常ルーチンに倣い東北東へ速度70」
「了解」
 レムリアが言って、副長が返す。程なく画面がぐにゃりと変形……印刷された写真をくしゃっと丸めるようになったことは、溝口にも見えたであろう。
 が、次の瞬間に映っているのは海の上であり、しかも、スクリーンの巨大さ故にその視界に地球の丸みが一部反映されている。丸みを帯びた水平線が見える高度を、船は圧倒的な高速で東進している。
 

|

« 天使のアルバイト-042- | トップページ | 天使のアルバイト-043- »

小説」カテゴリの記事

小説・魔法少女レムリアシリーズ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 【魔法少女レムリアシリーズ】転入生(但し魔法使い)-27-:

« 天使のアルバイト-042- | トップページ | 天使のアルバイト-043- »