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天使のアルバイト-046-

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 続いてワゴン内のスイカが幾つかこぼれ落ちる。そも重く大きな果実であり、落下リスクがあるため、ワゴン自体背が低いし、山積みしていたわけではない。が、POPスタンドがテコのように作用したのだろう、押し出されて落下し、幾つかが床で鈍い音を立てて割れ、次いで甲高い金属音と共にPOPスタンドが転がる。
 ギャーという、泣き声というよりは絶叫に近い声が上がり、次いで、
 スイッチが切れたように声が途絶える。
 エリアは戦慄した。
 幼子がケガをしたことは明白だった。
 駆け寄る衆目より早く現場に着き、割れ広がるスイカの中から幼子を引っ張り出す。
 顔中血だらけ。果実の赤ではなく流血である。四肢は弛緩し、意識なし。
「……!!」
 その状況に、周囲数人の女性から悲鳴が上がった。
 大けがという状況は、確かに悲鳴を上げたいところではある。しかし、エリアは至極冷静であった。
 それは彼女が、その本質のゆえに、何をなすべきか承知していたからである。また、悲鳴や、果てはパニックにつながる根源“絶命への恐怖”を元々有していないからでもある。
 駆けてくる他の店員。
「店員さん救急車!」
 客の声にその店員が動き出す。エリアは黙って、顔を流れる血の筋を逆に辿る。救急車の手配はお任せだ。今自分がなすべきは応急処置だ。
 血は頭から流れ落ちている。怪我したのは頭部。
 血の筋に沿い指を這わせる。売り場に入る前に“二重消毒”をしたので、指で触れても問題はあるまい。程なく指先に傷口の存在を感じ、髪の毛をかき分ける。
 切り傷だ。倒れたPOPのスタンドによるものであろう。母親が見たら気絶すると思う程の深さと長さでスパーッと裂け切れている。裂け目の奥より後から後から溢れ出てくる大量の血液。
 

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