【魔法少女レムリアシリーズ】転入生(但し魔法使い)-29-
従って、拾った心のシグナル……いじめ、という内容自体は、奇蹟というよりは、大人による論理と人間性に基づく対応が必要な事案であるが。
今二人が気付いた事態は様相を異にした。
正面スクリーンにカメラ画像を映す。北米大陸某国、としておく。時差相当の夜間の市街地であり、男の子が流れの縁に追い詰められており、数名の男の子がちょっかいを出している。叩いたり、石を投げつけたり。
北米大陸の国家では人種差別が引きも切らないが、これは肌の色ではないようだ。いじめる、ちょっかいを出してる5人の側は肌も髪の色も様々。
二人は気付いた。
「これは……レムリア」
「はい」
正面スクリーンの右下に文字列が走る。cloaking(迷彩)、空中静止。
「ゼロベクトル固定」
「行ってきます。ちえちゃんは待ってて」
レムリアは操舵室を出る。1階層下に医療機器を積み込んだ病室エリアがあり、そこから船底の蓋を開いてハシゴを下ろす。
ちょっかい出していた5人ほどがハシゴに気付いたと見え、動きを止めた。
ハシゴはステンレス製で電動伸縮である。レムリアは先端にぶら下がり、ハシゴと共に降下して行く。一方、船は迷彩で背景に溶け込んでおり、5人ほどには、虚空から突如ハシゴと女の子が降りて来たように見えたはずである。
少し催眠術。呪文を唱えるまでもない。彼らには天から降りて来た自分が天使に見えている。
「Oh my!」
「Jesus」
驚いた結果としてのオーマイゴッド、ジーザスクライスト。神よイエス様よという意味だが、“何てこった”程度に訳されることが多いようである。
ハシゴよ急げ。レムリアは思ったが、間に合わないとも同時に知った。
男の子が、“切れた”。
5人はそっちに気付いてはやし立てるように口々に何事か言い捨て、そのままちりぢりに逃げ出した。
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