【魔法少女レムリアシリーズ】転入生(但し魔法使い)-31-
但し使うに際し条件があるので説明する。いやなことをされた時だけ、にすること。もし、いたずらや攻撃など、悪いことしてやろうと思ってこれを使うと、逆に自分に術が掛かる。そして二度とこの呪文は効かなくなる。
「約束できる?」
「うん」
「あなたに祝福と幸せを」
指をパチンと鳴らすと、光の輪が彼を囲むように現れ、弾ける。但しそれは意図した幻覚。
「じゃあね」
「ありがとう、天使様」
ハシゴに乗り、そのまま船の高度を上げる。
元来た道を操舵室まで戻る。
大扉を開くと、自分を迎えた新しい友の顔は最前までのそれではなかった。
一部始終見ていたであろう、聞こえていたであろう、その経過は彼女溝口を変えたと判った。
それは、神秘体験を経て価値観が変わった人の表情であり目線であった。
「相原……さん」
その気は無かったが勝手に声が出る。そんな調子で溝口は言った。
「はい」
「あなたは、普段、いつも、こんなことを」
「子供が子供らしく、子供達にいつも笑顔を。それが私の願いで目指すもの。そのためなら持てる手段は皆使う。子供が幸せで居られることこそ平和の指標だと思うから」
船を動かす。船の向きは日本を出てから変えていないが、地球の丸みで向いてる方角は勝手に変わる。現在船首が向いているのは南南東。
溝口はうなずき、そしてゆっくりと息を吸い、
「あなたに、不可侵の神秘性を覚えます。気安く友達呼ばわりした私を許して下さい」
そう、ゆっくりと言い、頭を下げた。
「大げさだよ」
レムリアは笑って言い、手をさしのべ、
対し、吸い寄せられるように出てきた溝口の手を掴み、引き寄せて抱きしめた。
「あ……」
溝口の身体が溶けるようにほぐれて柔らかくなるのが判る。
それは、こうされたことがないことを、レムリアに教えた。
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