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2016年3月 2日 (水)

天使のアルバイト-047-

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 止血を試みる。ポケットからハンカチを出し、傷口を強く押さえる。
しかしこの程度では出血は収まらない。ハンカチがあっと言う間に真っ赤になり、なおかつ、押さえる指の間から血が溢れてしたたり落ちる。幼子の意識は回復しない。床面で頭部を強打したせいであろう。顔面は蒼白。
 これは自分の手に負えない。
「しゅう君っ!」
 母親であろう。悲鳴に近い声が背後で挙がり、若い女性が人垣を押しのけてエリアの傍らに飛び込んできた。
「しゅう君!どうしたのしゅう君!何が起こったの…」
 取り乱す母親。口元をわななかせ、その場で右往左往。
 こういう場合、口で何を言っても恐らく無駄である。“子どもは大丈夫”という現実がその場に認められない限り、収拾がつかない。
 店長が飛んできた。
「怪我だって!?」
「はい。血が止まらない。薬局から三角巾と包帯を」
 エリアは普段通りの口調で言った。言ってから、その口調がこれ以上のパニック伝搬や増幅を抑えるに最も効果的であろうと頭の隅で認識している。
「判った。救急車は手配させてる」
 店長が走り出す。取り巻きの客が隙間を作って店長を通す。
 誰かがハンカチを差し出してくれる。エリアは一礼してそれを受け取り、止血動作を続けながら、幼子の様子を見る。
 変わりはない。意識なく顔面蒼白。心拍が浅く早い。
 それは心臓からの悲鳴である。出血でショック症状を起こしかけている可能性がある。
血を止めなくてはならない。
 この幼子に、自分が抱いた幼い命に、自分の腕の中で、何かあってたまるものか。
 助けるよ……エリアは祈りながら、傷口に沿って手のひらを押し当て、そのまま幼子を包み込むように抱きかかえた。
 母の気持ちはこれか、という認識がある。熱い蒸気のようなものが身体を満たし、更にあふれて包むような感覚。
 

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