天使のアルバイト-051-
「はい。買い物カートから商品ボックスに落下。そこの床に転がっているスタンドで頭を切り、後頭部を床で打ちました。自発呼吸はありますが意識はありません。また、現在血は止まっていますが心拍は浅くて早いです」
エリアはそこまで言い、隊員に幼子を渡した。
隊員が幼子を見、小さく頷いて抱きかかえる。応じてもう一人の隊員が携帯電話を取り出す。なお、日本において救急搬送は、こうして救急隊員が状況を見て、それから病院に掛け合う、というパターンが多い。時間の浪費そのものであり、もどかしいことこの上ないのだが、制度と体制の不備であろう。なおもし、持病のかかりつけがあるなら、それを隊員に伝えると良い。
「了解しました。……これなら大丈夫でしょう。この子のお母さん。お母さんはいますか」
「は、はい」
母親がようやく口を開き、進み出た。
「一緒に来て下さい」
「はい」
「不安な顔しないで。大丈夫、この子は助かりますよ」
隊員は笑顔を見せて言った。
「じゃ、我々はこれで。後で不明点を電話するかも知れません」
隊員が店長とエリアに小さく一礼した。
「判りました。よろしくお願いします」
エリアが答えると、隊員らは背を向けて早足で歩き出す。その後を母親が小走りに追う。
見送るエリアの肩に店長が手を置いた。
「良くやった。ありがとう。どうするね?ショックならこのまま……」
振り返ったエリアに店長が訊く。精神的にショックを受けたのなら、このまま休みにしてもいいというわけだ。
「大丈夫です」
「そうか」
店長は言うと取り巻きの買い物客の方を見た。
「お客様方お騒がせしました。営業を再開します。鈴木君に須藤君、後かたづけを。エリカ、君は精肉でシャワー借りて、制服も新しいのを」
「はい」
エリアは答え、掃除係の二人に頭を下げてその場から去ろうとする。
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