【魔法少女レムリアシリーズ】転入生(但し魔法使い)-33-
地球の丸みを超えて月が見える。ダイナミックな視界の展開。
30キロも上昇すれば視界は最早宇宙そのもの。
「甲板を光圧(こうあつ)シールドで保護」
セレネの声を得、甲板へ出る。
溝口が息飲み凝固するのが判る。
暗黒の宇宙があり、足下には巨大な球体があり、“夜”が街の灯火を数多の宝石のように煌めいてあり、球体の向こうには後光のような光条が伸びる。その先には太陽があるのだろう。球体と光条の接するところに薄いベールのような膜があり球体を覆っているのが見え、それが大気の層と知る。その囲むベールのなんと薄いことよ。
そして、振り向いて目を戻すと、視界奥方には半月が虚空にぽつんと浮かび輝く。
レムリアは、目を戻した溝口に、頷いて見せた。
「(我唱える解き放つ力この身へ降らせ意図したこと形をなさず)」
地球のありさま見せてあげたいが時間が無い。目と目が合ったその瞬間に術を放つ。指先に月と同じ色の輝きを得て彼女へ放つ。
「あっ……」
溝口を閃光が捉えて人の形に彩る。彼女は一瞬に目映げに目を細め、次いで思い出したように頷いた。
「これでいいの?」
「うん。下ろしますよ」
船が一気に降下する。夜間なので黒い視界は変わらないが、くすんだ感じが汚れた大気の印象をもたらし、人間世界へ戻ったと教えてくれる。
「透過シールドを解除します。子供達は本船を知っているのでしょう?」
「はい。お願いします」
斯くて孤児院の庭に突如帆船が巨体横たえ。
その舷側から少女が二人飛び降りる。
溝口はメガネ型の端末を装備している。建物の構造が透けて見え、そこにセンサが捉えた赤外線の画像が重ねられる。人があればそのシルエットが動き、誰がどこにいるか判る。
一方レムリアはテレパシーで十分である。
遊戯室から庭へ繋がる扉が開いた。
飛び出してくる女の子、追ってくる巨漢。
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