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2016年4月20日 (水)

天使のアルバイト-054-

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「伊藤!売り場の氷だ。中崎!裏のホース駐車場まで持って行け。車に水ぶっかけて冷やす!」
「はい!」
「判りました!」
 携帯電話片手に店長が指示する。レジ娘とたこ焼き屋のお兄ちゃんがそれぞれ動き出す。
 一方エリアは駐車場……店の屋上へ向かう階段を駆け上がっている。
 駐車場へ着く。止まって見回す。車は7台。果たしてどれ。
 女性が追いついた。
「大きなグレーの……」
 女性が言い出すより一瞬早くエリアは見つける。レジャー用の大型4輪駆動車。その後席にぐったりしている子供の姿。
 全力疾走。
「あの、ロック……」
 エリアは聞いていない。熱く焼けたガラスに手をつき、車の中を見る。
 赤ちゃん。着ている服から男の子と見られる。ぐったりしており、肌が茹だった赤く、胸元には嘔吐の痕跡。
 エリアはドアに手を掛けた。
 信念がひとつ、意識にあった。
 何が何でもこの子を助ける。
 その気持ちは“雄々しいもの”と表現すればよいか。ドアロックの不可能性、状況の危機性、そのどちらも念頭になかった。ただ“助ける”という強い気持ちのみがあった。不安も恐怖もなく、太く強い確信だけが存在した。
 エリアは“信じ切った”のだ。
 だからエリアは、祈るではなく、念をこめるでもなく、ただ信ずるがままに、ドアノブを持ち上げて、そして、引いた。
 全身が炎を噴いたような感触が一瞬、存在した。
 がちゃり。
 ドアが開く。同時に流れ出す、ムッと息詰まるような熱の塊。
 チャイルドシートのベルトを外す。親に対する罵詈雑言が底なしの如く沸き上がる。憎いというのはこういう気持ちか。
 赤ちゃんを抱く。その腕のその頬の、この熱さは何たることか。
 人間の肌とは思えない、完全に体温制御を失調している。乾燥し、赤くなり、水ぶくれすら出来ている。
 

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