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【魔法少女レムリアシリーズ】転入生(但し魔法使い)-36-

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『シスターが見つかりました。縛られて食堂です。警察が間もなく。サイレンは鳴らさぬよう依頼しています』
「判りました」
 逃げてきた子供達と階段ですれ違う。
 3階に達する。
 すると、廊下窓際に男が一名、片腕にさっきのジュードー自慢の男の子を抱え込んでいる。
 なお、建物はカタカナの「コ」の字の形状をしている。その内側ぐるりに回廊を持つ。
 廊下の窓の下は庭。
「来るんじゃねぇ」
 という意味のオランダ語。以下同。
「来たらこいつ放り出すぞ!」
 左腕一本で男の子を抱え、右手の裏拳でガラス窓を叩き割る。
 向こうに溝口の姿が見えたが。
 呪文を使うまでも無い。
「おやんなさい」
 レムリアは間髪を入れずに言い、ニヤリと笑った。
 耳に指を入れピンを送る。PSC。船体浮上、透過シールド起動。
「何だと?」
「Go ahead.Make my day.」
 この輩が“ダーティハリー”なんか見てるか知らないが。
 レムリアは何ら躊躇なく走り出した。
「てめえ!」
 挑発に乗り、男は自ら言った通り、男の子を窓から外へ放った。
 が、もちろんそこには先んじて船がいる。男の子は甲板の上に載っただけ。
 透過シールドが働いているので、男の子の姿は闇の中に忽然と消えたように見える。
 驚愕が男を捕らえてストップモーション。
 次いで忽然たる闇からセレネの繊手が伸びて来て、テレパスショックでノックアウト。
 ミッションコンプリート。

 

 

 日本に戻る。ほぼ真昼という時間帯。
 四阿のそばに船を下ろしてもらう。
 漂う雲の彼方に暴風残して船は去り、見送った二人は互いの顔を見合わせる。
「現実?」
 溝口はレムリアに訊いた。
 それは時間旅行者の感覚に相違ない。学校屋上から消え、離れた四阿に戻った。
「帰ろ、ちえちゃん」
 レムリアは答えず、彼女に手をさしのべた。
「う、うん」
 新品の上履きだが、草むら歩いて泥だらけである。ただ、そんなのどうでもいい。

 

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