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天使のアルバイト-058-

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 そこでようやく救急車のサイレンが聞こえ始める。この間5分だが、その5分が異様に長い。
 怒鳴られてキョトンとする母親。
「お前車にこの子置いていっただろうが」
「でもクーラー付けて……茂樹ちゃん!?。ちょっと茂樹ちゃんに何して……」
「ドアホかお前は!クーラーなんかオーバーヒートですぐ止まるわ。おかげで赤ちゃん死にかけてるんだ」
 そこまで言われて、ようやく、母親は事態に気付いたようである。
「……そんな!クーラー……」
「機械を責める前に子供置き去りにした自分を恥じんかい!」
 店長が、その恰幅の良い体格の迫力を存分に生かして、駆け寄ろうとする母親を押しとどめ、糾弾する。それは勿論、パニックになった母親の所作が、救命作業の邪魔になるのを避けるため。
 母親の様々な声を聞き流しつつ、その刺さるような視線を受けつつ、エリアは赤ちゃんをずっと抱き、マッサージと呼吸を繰り返す。
 助けて……この子を助けて……。
「茂樹ちゃん!」
 母親が涙ながらに名を叫ぶ。
 無知で無責任……エリアは怒ろうと思った。母親を怒鳴りつけようと思った。
 しかし……次の瞬間出てきた言葉は違っていた。
「あなたが、うろたえて、どうするんですか」
 エリア自身驚くほど落ち着いた、ゆっくりした発声。
 周囲が息を呑む。似たような事例は毎年報道されるところである。エリアが母親を怒鳴り飛ばす……誰もがそう思ったであろう。
 しかし。
「過ちは仕方がない。でもこの子にとって頼れるのはあなただけ。そのあなたが取り乱したら、この子は誰を頼ればいいの?」
 エリアは幼子を抱き、その頬をゆっくりと撫でさすり、母親の目を見、言った。
 と、彼女の傍らに、白衣を着た中年女性が静かに歩み寄る。
 店内薬局の薬剤師である。
 

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